Shopifyアプリ開発の費用と依頼先|カスタムアプリが必要になる境界線

Shopifyアプリ開発の費用と依頼先|カスタムアプリが必要になる境界線
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既存アプリを3つ入れたのに、毎朝の受注データはCSVで手直ししている。在庫は倉庫のシステムと夕方に突き合わせる。こうした作業が積み重なると、「自社専用のアプリを作れないか」という考えが出てきます。ただ、アプリ開発には初期費用だけでなく、公開後の保守費もかかります。この記事では、カスタムアプリが必要になる要件の見分け方、開発費の目安と内訳、依頼先の選び方を順に取り上げます。見積もりの前に社内でそろえる資料にも触れるので、読み終えるころには「作るか、既存アプリで続けるか」を社内で説明できる材料がそろいます。

1.カスタムアプリは、既存アプリで足りないときに作る

公開アプリとカスタムアプリの使い分けをパズルのピースで表したイメージ

Shopify App Storeには1万を超えるアプリが並んでいます。それでも、自社の業務にそのまま合うアプリが見つからないことはあります。ただ、合わないと感じた原因が設定や組み合わせ方にあるなら、開発しなくても解決します。開発に進むかどうかは、Shopifyで機能を足す手段の違いを知ったうえで判断するのが近道です。

1-1. テーマ・公開アプリ・カスタムアプリの違い

Shopifyで機能を足す手段は、テーマ、公開アプリ、カスタムアプリの3つです。見た目や表示はテーマ、多くのストアに共通する業務は公開アプリ、自社だけの業務やシステム連携はカスタムアプリ、という分担になります。

機能を足す3つの手段

分担がこうなるのは、それぞれが動く場所が違うためです。テーマは、お客さまが見るページの表示を受け持ちます。サブスクの決済処理やポイント残高の管理、会計ソフトへのデータ連携のように、裏側で動く処理はテーマでは実現できません。こうした処理を受け持つのがアプリで、公開アプリは汎用の機能、カスタムアプリは1つのストアに合わせた機能を担います。

たとえば「商品ページに定期購入のボタンを置きたい」という要望。ボタンの見た目はテーマで整えられますが、定期的に決済を走らせる処理にはアプリが必要です。この場合は、公式のShopify SubscriptionsやMikawaya Subscriptionのような公開アプリで対応でき、開発の出番はありません。

定期購入アプリの手数料や機能の違いは、【Shopifyサブスクアプリ比較】で比べています。

開発を検討するのは、テーマでも公開アプリでも実現できないと分かってからです。「アプリを作りたい」という要望の中身を、表示の話か、裏側の処理の話かに分けるだけでも、開発が必要な範囲は狭まります。

1-2. カスタムアプリが必要になりやすい3つの要件

カスタムアプリが必要になりやすいのは、次の3つの要件です。

・社内の基幹システムや倉庫のシステムと、在庫や受注のデータを自動でやりとりしたい
・受注生産の仕様入力など、自社固有のルールで注文を処理したい
・公開アプリを重ねても、アプリ間のデータの受け渡しに手作業が残る

3つに共通するのは、公開アプリが想定している利用者の外にある部分だという点です。ロジレスやCrossMallのように、倉庫や複数モールとつなぐ公開アプリはあります。ただ、連携先が自社で作った基幹システムなら、それに合わせたアプリは公開されていません。

在庫や出荷の連携に使える公開アプリは、【Shopifyおすすめアプリ20選】で紹介しています。

3つ目は見落とされがちです。受注は管理アプリ、出荷は別のアプリ、会計はさらに別のアプリ。それぞれは正しく動いていても、間をつなぐのは担当者のCSV作業になっている。この状態では、注文が増えるほど手作業も増えます。月の注文数が500件を超えるあたりから、手作業の出荷対応は厳しくなり始めます。

ただし、自動化の一部は、Shopifyの無料アプリ「Shopify Flow」で済む場合もあります。FlowはBasic・Grow・Advanced・Plusの各プランで使え、Growプラン以上なら外部のシステムにデータを送る「HTTPリクエストの送信」も使えます※1。Flowで組める部分を除いた残りが、開発を依頼する範囲です。

1-3. 既存アプリの月額と開発費は、何年分で比べるか

既存アプリを使い続けるか開発するかは、アプリの月額料金を3年分に直し、開発費と保守費の合計と並べると判断しやすくなります。月額だけを見ると安く、開発費だけを見ると高く感じるので、期間をそろえないと比べられません。

たとえば在庫一元管理のアプリは、月額5,000〜30,000円ほどです。3年使えば18万〜108万円になります。同じ価格帯の出荷自動化アプリを併用していれば、合計はその倍近くになります。開発する場合は、開発費に加えて毎月の保守費が3年分かかります。

ほかのカテゴリのアプリの月額は、【Shopifyアプリ完全ガイド】で一覧にしています。

金額に出ない費用もあります。仮に担当者がCSVの手直しに毎日30分かけているなら、営業日22日で月11時間ほど。この時間は既存アプリの側に足して考えます。公開アプリの場合、アプリ本体の改修はアプリの開発会社が行います。カスタムアプリでは、Shopifyの仕様変更に合わせた改修も自社の費用になります。

3年分で並べて金額が近いなら、既存アプリで続けるほうが負担は軽く済みます。手作業の時間が注文数に比例して増え続けているなら、開発費を払ってでも仕組みを変える時期です。

2.Shopifyアプリの開発費は、公開後の保守まで含めて考える

Shopifyアプリの開発費用と保守費を電卓で試算するデスクのイメージ

見積書の合計金額は、アプリが動き始めるまでの費用です。カスタムアプリは公開したあとも、Shopify側の更新に合わせて手を入れ続ける必要があります。初期費用と、その後に毎年かかる費用。この2つを並べてはじめて、開発費の全体が見えます。

2-1. カスタムアプリの開発費の目安と、工程ごとの内訳

Shopify日本の解説記事では、Shopifyでカスタムアプリなどを独自に開発する費用を、数十万〜数百万円としています※2。数字は2026年5月時点の業界水準にもとづく目安です。

幅が広いのは、開発費が「人月単価×作業量」の積み上げで決まるためです。同じ記事では、ECサイトのカスタマイズ全般の人月単価として、中堅のWeb制作会社・EC専門会社で90万〜150万円ほどを挙げています。仮にこの単価で2人月かかる機能なら、180万〜300万円です。

工程ごとの費用比率

複数社の見積書を並べると、要件定義やテストの行は削れそうに見えます。ただ、そこを薄くしたアプリは、公開後に想定外の注文パターンで止まりやすくなります。実装以外の工程にも総額の半分近くがかかるのが、アプリ開発の費用の特徴です。

見積もりを比べるときは、合計額の高い安いより、工程ごとの比率がこの範囲から外れていないかを見ます。テストの比率が極端に低い見積もりは、安さの理由を聞いておく価値があります。

2-2. 見積もりが膨らむのは、連携先と例外処理が増えるとき

同じ「在庫を連携したい」という要望でも、つなぐ先が増えるほど、うまくいかなかったときの処理を細かく決めるほど、工数は増えます。Shopify日本の同じ記事でも、基幹システム連携は100万〜800万円と、ほかの機能より幅を広く取っています※2。

連携先のシステムは、それぞれデータの形や受け渡しの方法が違います。1つ増えるごとに、仕様の読み込み、つなぎ込み、テストが一式増えます。データを片方向に送るだけか、双方向で同期するかでも作業量は変わります。さらに工数を押し上げるのが、例外が起きたときの処理です。

・倉庫側との通信が夜間に途切れたら、どこから再送するか
・Shopifyと倉庫で商品コードが一致しない注文を、どう扱うか
・在庫数が両方で同時に更新されたら、どちらを正とするか

打ち合わせのたびに「この場合は?」という質問が増え、見積もりが少しずつ上がっていく。連携の開発では珍しくない流れです。1つひとつの例外は小さくても、それぞれに処理とテストが必要になります。

見積もりが予算を超えたときは、連携先を減らす前に、例外の扱いを見直します。「例外が起きたら担当者に通知し、手で直す」と決めるだけで、自動で処理する範囲が狭まり、工数を抑えられる場合があります。

2-3. 公開後も続く保守費と、Shopifyの仕様変更への対応

同じ解説記事では、カスタムアプリを含む開発の保守費を、初期開発費の年10〜20%ほどとしています※2。300万円で開発したアプリなら、年30万〜60万円です。

保守が欠かせない理由の1つが、ShopifyのAPI(アプリがShopifyとデータをやりとりする窓口)の更新です。Shopifyは3か月ごとに新しいAPIバージョンを公開し、各バージョンのサポート期間は最低12か月です※3。サポートが終わったバージョンを指定したままにすると、Shopifyはそのとき使える最も古いバージョンで応答します。その結果、アプリの動きが変わるおそれがあります。

公開から1年ほど、誰もアプリに触れていない。ある日、注文データの連携が止まる。開発会社との契約が公開時点で終わっていると、原因を調べる段階から新しく依頼先を探すことになります。保守費には、こうした障害対応や、APIの更新に合わせた改修が含まれます。

予算は「開発費」と「毎年の保守費」の2本立てで組みます。見積もりを受け取ったら、APIの更新への対応が保守費に含まれるのか、都度の別料金なのかを確認します。

3.依頼先は、Shopifyの知見と開発体制の両方で選ぶ

アプリ開発の依頼先と要件や契約内容を打ち合わせる商談のイメージ

カスタムアプリの開発は、プログラムが書けるだけでは進みません。既存アプリで済む部分を見分けるにはShopifyの知見が、公開後の改修を続けるには開発の体制が必要です。依頼先によって、この2つの厚みは違います。

3-1. フリーランス・Shopify制作会社・システム開発会社の違い

依頼先は、開発の重さと、公開後に誰が面倒を見るかで選びます。3つの依頼先は、向いている案件がそれぞれ違います。

依頼先ごとの違い

人月単価にも差があります。Shopify日本の解説記事が挙げるECサイトのカスタマイズ全般の単価は、フリーランス・小規模制作会社で60万〜100万円ほど、大手SIerで140万〜220万円ほどです※2。単価の差は、関わる人数や、品質を管理する工程の厚みの差でもあります。

単価だけで依頼先を決めると、あとで手間がかかることがあります。たとえば、システム開発会社に既存アプリで済む機能まで作ってもらう。小さな案件の保守を、体制の薄い依頼先に何年も任せる。どちらも、案件の重さと依頼先が合っていない状態です。

「開発が必要かどうか」から相談したいならShopify制作会社、仕様が固まっていて社内システムの改修も伴うならシステム開発会社が合います。フリーランスは、範囲を絞った開発に向いています。

3-2. Shopify Partner Directoryで確認できること

Shopify Partner Directoryでは、パートナーをサービス内容、米ドルの価格帯、所在地、対応言語、業界で絞り込めます。平均評価で並べ替えることもできます※4。

判断材料として役立つのがレビューです。レビューの依頼は、パートナーをコラボレーター(外部の協力者用アカウント)として1週間以上ストアに招いたマーチャントに届きます。実際にストアで作業した相手からの評価なので、紹介文より具体的な判断材料になります。

プロフィールを開いたら、アプリ開発をサービスとして掲げているかを見ます。英語版のDirectoryでは、アプリ開発は「Custom apps and integrations」、システム連携は「Systems integration」という区分名です。レビューに、評価したサービスの名前が出ていれば、アプリ開発での評価かどうかも分かります。

Directoryで分かるのは、候補を絞り込むまでです。問い合わせでは、似た連携を開発した経験と、公開後の保守を誰が担うかを聞きます。なお、費用はパートナーから直接請求され、Shopifyの請求書には載りません。

3-3. ソースコードと管理権限は、どちらが持つ契約か

契約前に決めておきたいのは、アプリをどちらの管理下で作るかと、ソースコードの権利をどちらが持つかです。この2つが曖昧なままだと、依頼先を変えたいときに身動きが取れなくなります。

2026年1月1日以降に作るカスタムアプリは、Dev Dashboard(アプリの作成・管理画面)で作成・管理します※5。アプリには、警告を受け取るためのスタッフかコラボレーターのアカウントが関連付けられます。開発会社側の管理画面で作ったアプリを、あとから自社側に移せるかは、作り方によって変わる可能性があります。ソースコードの権利も、契約で決めなければ開発した側に残るのが原則です。

保守の対応に不満があり、別の会社に見積もりを頼む。ところが手元にソースコードがなく、アプリの管理画面にも入れない。この状態では、新しい依頼先は既存のアプリを直せず、作り直しから見積もることになります。

ソースコードの納品と権利の帰属、アプリの管理者、契約終了時の引き継ぎ方法。この3点を、契約書か発注書に書き込みます。開発費を払う側が、アプリを手放さずに依頼先を選び直せる状態にしておくためです。

4.見積もりの精度は、依頼前の要件整理で決まる

「アプリを作りたい」とだけ伝えた相談では、開発会社は幅の広い見積もりしか出せません。何を前提に考えればよいかが分からないためです。前提を発注する側で先に示せば、金額の幅は狭まり、複数社の見積もりも同じ条件で比べられます。

4-1. 自動化したい業務と、いまの手作業を書き出す

最初に書き出すのは、自動化したい業務の「誰が・いつ・何を・どれくらいの時間で」です。アプリの機能を考えるのは、そのあとで構いません。

・誰が:その作業を担当している人と部署
・いつ:毎朝、出荷の前、月末など、作業が発生するタイミングと頻度
・何を:開いている画面、使っているファイル、ほかの人への連絡
・どれくらいの時間で:1回あたりの作業時間

業務の流れが分かると、開発会社はShopify Flowや既存アプリで済む部分と、開発が必要な部分を切り分けられます。機能の希望だけを渡すと、その切り分けが見積もりの前提から抜けてしまいます。

たとえば、出荷の前にギフト包装の指定がある注文を目で探し、倉庫にメールで伝えている。書き出してみると、毎日の作業でありながら、手順がどこにも残っていないと分かることがあります。こうした作業ほど、担当者が替わったときに漏れやすくなります。

書き出した一覧は、そのまま開発会社に渡せる資料になります。整った文書でなくても、作業の流れと時間が分かれば、見積もりの前提として十分に使えます。

4-2. 最初に作る機能と、後から足す機能を分ける

初回の開発は、書き出した業務のうち、手作業の時間がいちばん長いもの1つに絞ります。残りは、最初のアプリを運用してから足していきます。

作る機能が増えるほど、要件定義とテストの手間も増えます。Shopify日本の解説記事では、独自開発を含む複数機能のプロジェクトの期間を3〜6か月ほどとしています※2。最初から全部を作ろうとすると、手作業が減り始める日がその分だけ遠のきます。

「ついでにこれも」と機能を足していくうちに、公開の予定が後ろにずれていく。そのあいだも、担当者は毎日同じ手作業を続けています。機能を絞って先に公開すれば、その時点から作業時間が減り始めます。

2つ目以降の機能は、1つ目を運用してから決めるほうが要件が正確になります。実際に使ってみると、最初に思い描いていた機能が不要だったと分かることもあるからです。

4-3. 連携するシステムの仕様書と担当者をそろえる

社内のシステムや倉庫のシステムと連携する場合、見積もりを頼む前に手元に置きたいのは次の4つです。

連携の前に手元に置く資料

仕様書がないと、開発会社は連携先の調査にかかる時間を読めません。その分の工数を見込んで、見積もりが高めに出やすくなります。

基幹システムを導入したベンダーとの保守契約がすでに切れていて、仕様書の置き場所を社内の誰も知らない。連携の相談では、こうした状況から始まることもあります。その場合は、資料探しそのものが開発の前の作業になります。

この4つが手元にあれば、開発会社は調査の時間を見込まずに見積もれます。どれかが欠けているときは、そのことを先に伝えるだけでも、見積もりの前提がずれにくくなります。

5.まとめ

Shopifyアプリの開発は、作るかどうかの判断から始まります。開発に進む前に、次の順で考えると判断がぶれにくくなります。

  1. テーマ、公開アプリ、Shopify Flowで実現できないかを見る
  2. 既存アプリの月額と手作業の時間を、3年分で開発費と比べる
  3. 予算は、開発費と毎年の保守費の2本立てで組む
  4. 依頼先は案件の重さで選び、ソースコードとアプリの管理者を契約に書く
  5. 見積もりの前に、業務の流れと連携先の資料を手元に置く

カスタムアプリが必要になるのは、自社の業務やシステムがShopifyの外側までつながっているときです。どこまでを既存アプリに任せ、どこからを開発するか。その線引きを自社だけで決めにくいときは、Shopifyの制作と開発の両方に関わる会社に相談できます。業務の一覧を持っていけば、話が早く進みます。

出典
※1 Shopifyヘルプセンター「Shopify Flow」
※2 Shopify日本「ECサイトのカスタマイズ完全ガイド|費用相場・独自機能・拡張性を徹底解説」
※3 Shopify.dev「API versioning」
※4 Shopifyヘルプセンター「Shopifyパートナーを雇って協力してもらう」
※5 Shopifyヘルプセンター「カスタムアプリ」

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