ECサイトリニューアルの進め方|要件定義から公開までの3フェーズ

ECサイトリニューアルの進め方|要件定義から公開までの3フェーズ
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ECサイトリニューアルの進め方|要件定義から公開までの3フェーズ

ECサイトのリニューアルにかかる期間は、全体で3〜6ヶ月が相場です。工程は要件定義・設計〜構築・テスト〜公開の3フェーズに分かれ、なかでも要件定義は時間がかかりやすいフェーズです。

ただ、相場を聞いても自社が3ヶ月で済むのか6ヶ月かかるのかは、すぐには判断できません。SEO評価は引き継げるのか、顧客データは消えないのか、社内にエンジニアがいなくても進められるのか。こうした前提が見えないまま検討に入ると、後から大きく予定がずれます。

この記事では、3フェーズの解説に入る前に押さえたい前提と、全体期間の相場を確認したうえで、各フェーズで何が起きるかを順に見ていきます。読み終えたあと、自社のスケジュールに当てはめて判断できる状態を目指しました。

1.ECサイトリニューアルを始める前に押さえる3つの前提

ECサイトリニューアル前に確認する前提をチェックリストで整理するイメージ

リニューアルに踏み出せない理由の多くは、進めば必ず直面する3つの不安に集約されます。SEO評価が落ちないか、顧客データは引き継げるか、社内にエンジニアがいなくても進められるのか。先に答えが見えていれば、踏み出した後の検討が一気に楽になります。

1-1. URL構造が変わっても、SEO評価は引き継げる

301リダイレクトを正しく設定すれば、リニューアル前にサイトが積み上げてきたSEO評価は、新しいURLに引き継げます。

Shopifyへのリニューアルでは、商品ページは/products/、カテゴリページは/collections/の形式にURLが変わります。これはShopifyの仕様で、変更できません。ただ、旧URLから新URLへの301リダイレクトを設定すれば、検索エンジンは旧URLの評価の多くを新URLに引き継ぎます

準備で外せないのが、検索流入の多い主要URLのリスト化です。Google Search Consoleで上位の流入URLを書き出し、新URLとの対応表を作っておきます。リダイレクト漏れはSEO評価が落ちるよくある原因の一つで、ここを丁寧にやるだけで結果が変わります。

公開後、検索順位は一時的に揺れることがあります。リダイレクトが正しく設定されていれば、数週間で元の水準に戻るのが一般的です。

1-2. パスワードは引き継げないが、データは移行できる

公開当日、過去の会員がログインできずに問い合わせが集中します。これは、リニューアルで起きる典型的なトラブルの一つです。ただ、事前に手を打てば防げます。

顧客情報・注文履歴・商品データは、Shopifyへ移行できます。ただ、パスワードだけは技術的に引き継げません。パスワードはハッシュ化という暗号化を経て保管されており、元のサイトとShopifyで方式が異なるため、暗号化されたものをそのまま持ち込んでもログインには使えない仕組みです。

公開時に欠かせないのが、「パスワード再設定のお願い」の事前案内です。会員には事前にメールでお知らせし、公開後はログイン画面にも案内を出します。この一手間で、ログインできない問い合わせの集中を防げます。

注文履歴は表示自体は問題なくできますが、過去注文の再決済や独自の注文ステータスがある場合は、運用面の調整が必要なケースもあります。

1-3. エンジニアがいなくても、運用は回せる

Shopifyの日常運用は管理画面で完結します。エンジニアが必要になるのは、構築フェーズと一部のカスタマイズ作業に限られます。

商品登録、在庫の更新、受注処理、配送設定といった日々の運用は、管理画面の操作だけで進められます。一方、テーマの細かなカスタマイズ、独自のアプリ設定、データ移行といった専門領域は、エンジニアまたは制作会社の作業範囲です。

よく取られるのが、構築は外部に任せ、運用は社内で回す形です。社内に求められるのは「管理画面を操作できる担当者」と「問い合わせ対応ができる担当者」の最低2人。商品数や注文数が増えてきても、運用の中心は管理画面のまま変わりません。

社内にエンジニアがいないという理由でリニューアルを諦める必要はなく、役割を分担すれば運用は十分に成立します。

1-4. 3つの前提が満たせるからShopifyを選ぶ

SEO評価・データ・運用の3つの不安がいずれもShopifyへの移行で解消できることが、ECサイトのリニューアル先としてShopifyが選ばれる主な理由です。初めてリニューアルに踏み出す事業者にとって、検討の入口を作りやすいプラットフォームだといえます。

ただし、Shopifyにも向き不向きはあります。BtoB特化の取引や、極めて独自性の高い販売フローを持つ事業の場合は、標準では実装できない要件が増えていきます。

3つの前提を確認したうえで、自社の要件がShopifyの標準で吸収できる範囲かを見極めます。次の章では、この検討にかかる期間の見立てから入ります。

2.「うちは何ヶ月かかるのか」——規模と体制で変わる相場

Shopifyリニューアルの期間相場をスケジュール表で見立てるイメージ

リニューアルを検討するときに最初に気になるのが、全体でどれくらいの期間がかかるのかです。3ヶ月で終わるのか、半年以上かかるのか。社内に説明する段階でも、ここが見えていないと話が前に進みません。この章では、全体期間の相場と内訳、そして自社が長くなる側か短くなる側かを判断する材料をそろえます。

2-1. 全体期間の相場は3〜6ヶ月

Shopifyリニューアルでは、ゼロからシステムを開発するのではなく、既存のテーマをベースにカスタマイズしていく形が中心になります。フルスクラッチで作るECサイトに比べると、構築フェーズは短く済みます。

3ヶ月で済むケースは、テーマ標準で要件が満たせ、データ移行も軽い場合です。商品数が少ない、外部システムとの連携もない、判断のスピードが速い。こうした条件が揃うと、最短水準で進められます。一方、6ヶ月かかるケースは、要件の範囲が広い、複数の決裁者がいて社内合意に時間がかかる、他のシステム(基幹システム、顧客管理ツールなど)との連携が必要、独自要件が多いといった状況です。

ここで注意したいのは、管理画面の構築が早い ≠ 全体が早いという点です。Shopifyは管理画面の構築自体は短い期間で進められますが、リニューアルは新規構築と違い、既存サイトの資産(顧客データ、SEO評価、運用ルール)との整合確認が常に発生します。この調整に時間がかかることが、リニューアルが新規構築より長くなる理由です。

2-2. 期間の内訳|要件定義が長引きやすい

全体の内訳を見ると、要件定義フェーズは長引きやすく、設計〜構築、テスト〜公開と続きます。

要件定義が長くなるのは、社内の合意形成、要件の洗い出し、優先順位の決定という、判断と調整が連続するフェーズだからです。手を動かす作業よりも、決めることそのものに時間がかかります。

初心者が軽視しがちなのが、ここの期間配分です。「要件定義は1ヶ月で済ませて、構築に時間をかけたい」という相談は少なくありません。ただ、要件定義を短く切り上げると、設計・構築フェーズで「やっぱりこの機能も必要」「この仕様は変えたい」といった手戻りが発生し、結果的に全体期間が延びます。要件定義に時間をかけたほうが、後工程は早く進みます

期間配分は規模と体制で変わりますが、要件定義に時間がかかりやすい点は、多くの案件に共通します。

2-3. 自社は長くなるか短くなるか|判断材料となる条件一覧

自社が長くなるか短くなるかは、規模・社内体制・外部連携・要件の幅の4つの観点で見立てます。この4つで、作業量と判断スピードの両面から期間が決まります。

判断材料となる条件を以下にまとめます。自社の状況を当てはめると、長くなる条件が多ければ6ヶ月寄り、短くなる条件が多ければ3ヶ月寄りです。両方が混在する場合は、4〜5ヶ月を見立てておくのが現実的です。

この表に当てはまらない例外もあります。たとえば、海外展開を同時に進める場合や、ブランドサイトとの統合がある場合は、6ヶ月を超えることもあります。自社のケースが表からはみ出すと感じたら、Partnerに相談して個別に見立ててもらうのが早道です。

3.【フェーズ①】要件定義|「ECサイトで何をどう作るか」を決める

ECサイトの要件定義をホワイトボードと付箋で整理する打ち合わせのイメージ

要件定義は、全体期間のなかでも長くなりやすいフェーズです。決めることが多すぎても少なすぎても、後の工程で歪みが出ます。社内で進める3つの作業に分けて見ます。

3-1. 「なぜリニューアルするか」を言語化する

リニューアルの目的を「売上を上げたい」レベルで止めず、何を改善することで何が変わるかまで言語化します。

目的が言語化されていない状態で要件を洗い出すと、機能の優先順位がつかず、「あれもこれも必要」と機能が膨らみます。「商品ページの離脱を減らす」「購入完了までのステップを短くする」のように改善したい部分まで落とせていれば、要件の取捨選択は自然に決まります。

言語化のフレームは、3つの問いで構成できます。

・現状の課題は何か(数値で説明できる課題か、感覚的な課題か)

・どの指標を改善したいか(売上、購入率、リピート率など)

・リニューアル後にどうなっていたいか(数値目標、運用上の理想状態)

この3つに答えられない状態なら、要件決めはまだ早い段階です。仮説でいいので一度書き出して、社内の関係者と揉む工程を入れてから、要件定義に入ります。

経営層・現場・マーケティング担当でリニューアルの意味が違って理解されている状態だと、要件決めの段階で必ずぶつかります

3-2. 標準機能・アプリ・カスタマイズの3階層で要件を振り分ける

洗い出した要件を「標準機能で済むもの」「アプリで足すもの」「カスタマイズが必要なもの」の3階層に振り分けると、コストと工期の見立てが立ちます。

3階層は、コストと将来の運用負担に直結します。アプリは月額が発生するものが多く、カスタマイズは初期費用に加えてアップデート時の保守も必要です。すべてカスタマイズで対応すると、初期費用と保守費用の両方が膨らみます。

具体例で見ると、振り分けのイメージがつかみやすくなります。

・標準機能で済む:商品登録、在庫管理、配送料の地域別設定、カゴ落ちメール

・アプリで足す:送り状の発行、ポイント機能、出荷自動化

・カスタマイズが必要:独自のレコメンド、特殊な見積もり機能、基幹システムとの連携

標準で十分な配送設定をカスタマイズで作り込んでしまうと、初期費用が膨らむうえに、Shopify本体のアップデート時の保守も必要になります。

「この機能はアプリで、こちらはカスタマイズで」と伝えられるなら、Partnerからの見積もりの精度は確実に上がります。

なお、Partner(Shopify公認の制作会社)の選び方や見極めの判断軸については、Shopifyパートナーとは?選び方とDirectoryの使い方 を参照してください。

3-3. 書きすぎると設計が動かなくなる|要件定義書の止めどころ

要件定義書は、Partnerが見積もりを出せる粒度で止めます。設計フェーズで実装の選択を残すのが、後工程をスムーズに進めるコツです。

要件定義の段階で実装方法まで決め込むと、「もっと運用しやすい構成がある」「この仕様だと注文画面が複雑になる」といった、設計に入って初めて見える指摘を反映できなくなります。逆に書かなさすぎると、設計フェーズで再ヒアリングが発生し、見積もり精度も落ちます。

適切な粒度の目安は、機能ごとに3つの要素を書くことです。

・機能の目的(なぜこの機能が必要か)

・必須条件(この機能を成立させるために外せない要件)

・優先度(必須・推奨・余裕があれば、の3段階)

書かなくていいのは、実装方法です。「このアプリを使う」「このテーマで作る」といった選択は、設計フェーズでPartnerと相談して決めます。

要件定義書は一度書いて終わりにせず、設計フェーズで更新する前提で進めます。最初から完璧を目指すよりも、変更管理の仕組みを決めておく方が、後工程の手戻りは少なくなります。

4.【フェーズ②】設計〜構築|ゼロ開発ではなく、テーマカスタマイズ

Shopify構築でテーマをカスタマイズしながらサイトを設計するデザイン作業のイメージ

Shopifyの構築は、既存のテーマをベースにデザインと機能を調整していく形が中心です。テーマ選びとカスタマイズの加減で、後の運用が大きく変わります。

4-1. 無料テーマで始めて、後から困らないか

無料テーマでも基本機能は揃いますが、デザインの自由度・拡張余地・サポートで有料テーマとの差が出ます。

無料テーマはShopify公式が提供しており、商品ページ・カゴ・決済といった基本機能は問題なく動作します。有料テーマは一回購入で約3〜6万円、デザインのバリエーションが多く、独自機能を最初から備えているものもあります。

判断軸は3つに分けられます。

・事業フェーズ:立ち上げ初期で予算を抑えたいなら無料、ブランドを前面に出したいなら有料

・デザイン要件:競合と差別化したい・独自の世界観を出したいなら有料

・将来の切り替えコスト:途中で有料に切り替えると、カスタマイズのやり直しが発生する

最も避けたいのは、「とりあえず無料で始めて、後で考える」という選び方です。事業拡大後に有料テーマへ切り替えると、初期から有料で始めるより総コストが高くなることもあります。

4-2. カスタマイズしすぎると、アップデートが止まる

テーマファイルを直接編集すると、Shopifyから配信されるテーマアップデートが当たらなくなります。セキュリティ更新や新機能が反映されない状態でサイトを運用することになります。

テーマ本体を改修した状態だと、改修内容が上書きされるリスクがあるため、自動的にアップデートが適用できません。アップデートを適用するには、改修内容を新しいテーマに移し替える作業が毎回発生します。

回避策は、カスタマイズをテーマ本体から切り離すことです。テーマファイルとは別の場所に独自コードを書き、テーマ本体を変更しない形で機能を追加すれば、アップデートが配信されてもそのまま適用できます。

判断基準はシンプルです。標準機能やアプリで代替できるなら、カスタマイズしない。代替手段がない場合だけ検討し、その場合もテーマ本体に手を入れない方法を選びます。

5.【フェーズ③】テスト〜公開|データ移行と切り替え作業

ECサイトのデータ移行とテストを経て公開する切り替え作業のイメージ

公開直前のフェーズは短い期間で進みますが、ここでの判断ミスがそのまま本番のトラブルにつながります。テスト・データ移行・公開後の運用立ち上げで起きる典型的なつまずきを押さえます。

5-1. 「動作確認は済んだ」では足りない|テスト期間の3つの層

テスト期間で確認すべきは、動作確認・受入テスト・関係者レビューの3層です。動作確認だけで済ませると、業務フロー上の不具合を見逃します。

動作確認は機能単位(ボタンが押せるか、決済が通るか)、受入テストは業務フロー単位(注文〜配送までを通して回るか)、関係者レビューは立場単位(経営層・カスタマーサポート・配送担当の目線でチェック)。どれか一つでも欠けると、本番で発覚するトラブルが起きます。

見落としやすいのは、受入テストの層です。機能単体では動くのに、業務の流れで組み合わさったときに不具合が出る。決済は通るのに送料計算が連動していない、在庫は減るのに通知メールが飛ばない。社内で実際の業務をシミュレーションする工程を入れることで、こうした不整合を公開前に潰せます。

3層を通すと決めておくと、公開後のトラブル対応コストが大きく下がります。

5-2. データ移行で詰まりやすいポイント

データ移行で典型的に詰まるのは、CSV形式の不一致・画像URL切れ・タグやコレクション分類の崩れの3つです。

旧サイトが出力するCSV形式とShopifyが受け入れるCSV形式は完全には一致せず、項目名の対応や文字コードの調整が必要になります。画像は旧サイトのURLでは表示できないため再アップロードが必要で、カテゴリ構造もShopifyの「コレクション」という仕組みに合わせて作り直すことが多くなります。

事前に手を打てるのが、移行前のテスト移行です。本番データの一部を先にインポートして、形式の不一致や画像の表示崩れを確認します。ここで問題を見つけておくと、本番移行のときに止まらずに済みます。

5-3. 「公開して終わり」ではなく、そこから2週間が本番

公開当日と公開後2週間で見るべきことが分かれており、両方を計画に入れる必要があります。

公開当日の作業はDNS切り替え・リダイレクト動作確認・決済テスト・関係者への通知が中心ですが、公開後1〜2週間は実際の受注フロー、問い合わせの傾向、検索順位の挙動を見続ける必要があります。検索エンジンが新URLに評価を移す数週間の間に、想定外の挙動が出るのが一般的です。

様子見期間に入る前に、エスカレーションラインを決めておきます。注文が入らない、決済が通らない、検索からの流入が落ちた、といった事態が起きたときに、社内の誰が判断し、Partnerに連絡を入れるか。役割分担を公開前に決めておくと、トラブル時の動きが速くなります。

公開はゴールではなく、運用の立ち上げが始まる日です。2週間の様子見期間を計画に入れて初めて、リニューアルは完了します。

6.まとめ

まとめ

ECサイトのリニューアルは、要件定義から公開までの3フェーズで進み、全体期間は3〜6ヶ月が目安です。長くはありますが、踏み出す前に押さえるべき前提が固まっていれば、迷いながら検討に時間を使うより、決めながら進める方が結果的に早く形になります。

読み終えた今、最初に手をつけられるのは目的の言語化です。現状の課題と、リニューアル後にどうなっていたいかを、関係者で同じ言葉にする。この一枚があれば、Partnerに相談するときも、社内で合意を取るときも、判断の軸ができます。

完璧な要件定義書を作ってから動き出す必要はありません。粗くてもいったん書き出し、関係者と詰めていく。動き出してから整える前提で進めると、全体の見通しが現実的に見えてきます。

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