ECサイトの広告運用でROASを改善する実践ノウハウ

ECサイトの広告運用でROASを改善する実践ノウハウ
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広告のROASは、広告経由の売上を広告費で割った値です。数字が大きいほど効率よく売れているように見えます。ただ、この数字を上げようと配信をいじる前に、確かめておきたいことがあります。

管理画面に出ているROASそのものが、実態とズレていることがあるからです。計測タグの入れ方ひとつで売上が水増しされたり、逆にCVを取りこぼしたりします。土台の数字が信用できなければ、その上でどう手を打っても判断を誤ります。

計測が実態と合っているか確かめる、成果の出ない配信を削って費用を下げる、訴求の質を上げて流入を変える、目標ROASをもとに予算を配り直す、という4つの観点から改善していきます。自分の広告がどの段階でつまずいているかを探しながら読み進めてください。

1.改善の前に表示ROASが実態と合っているか確かめる

改善の前に表示ROASが実態と合っているか確かめる

配信をいじる前に、まず管理画面のROASそのものを疑います。数字が実態とズレていれば、正しく回っている配信を止めたり、割に合っていない配信に予算を寄せたりと、この後のすべての判断が逆を向くからです。

1-1. 計測タグの二重計上と計測漏れがないか確認する

管理画面のROASが実態とズレるとき、まず疑うのは計測そのものです。原因の多くは、CVの二重計上か、計測漏れのどちらかにあります。

二重計上は、計測タグを同じページに重ねて入れてしまったときに起きます。1件の購入が2件と数えられれば売上が水増しされ、ROASは実態より高く出ます。この状態で「成果が出ている」と読むと、本当は割に合っていない配信に予算を足すことになります。

逆の漏れも起こります。タグが発火する前にユーザーが離脱したり、Google広告の自動タグ(クリックIDとも呼ばれる、広告経由の訪問を識別するための仕組み)が無効だったり、Cookie規制で追跡が途切れたりすると、成果が拾えません。実際にはCVを生んでいる配信が「成果なし」と表示され、止める判断につながります。

まず自社の管理画面で確認するのは、計測タグの実装本数と、自動タグ設定が有効になっているかの2点です。この2点の状態が分からないまま出したROASは、上げ下げを議論する土台になりません。

1-2. 管理画面のROASを実売上(GA4・受注データ)と突き合わせる

媒体の管理画面のROASは、それ単体では実態を確定できません。GA4や受注データと、同じ期間・同じ定義で並べて初めて判断材料になります。

媒体とGA4の数字は、そもそも一致しません。売上をどの接点に割り当てるかのルールと、CVを数えるタイミングが違うからです。この評価範囲の違いが、数字のズレを生みます。Google広告のデータドリブンやラストクリックは、Google広告の中の複数の接点(検索・ショッピング・ディスプレイなど)のうち、どれに売上を割り当てるかを決めるものです。一方のGA4は、Google広告の外側で起きた接点も拾って貢献度を割り振ります。

たとえばGoogle広告をクリックした後、後日オーガニック検索から再訪して購入した場合、Google広告は自社の成果として数え、GA4は他チャネルにも貢献度を割り振ります。同じ1件の購入でも、Google広告の中だけで見るか、全チャネルで見るかで、貢献先の姿が変わります。

突き合わせるときは、期間・タイムゾーン・CVの定義をそろえ、反映の遅れる当日を避けて前日以前で照合します。完全一致は追いません。配信の最適化は媒体側の数字、売上が本当に立ったかは受注データ、と用途で見る数字を分けます。月次で媒体ROAS・GA4のCV・受注売上を同じ期間で並べておけば、乖離の幅を自分の基準として持てます。急に乖離が広がった月にだけ、実装や設定を疑えばよくなります。

2.成果の出ない配信先と検索語句を削ってROASを底上げする

成果の出ない配信先と検索語句を削ってROASを底上げする

計測が信用できる状態になったら、次は費用側です。同じ広告費でも、成果につながらない検索語句や配信面に流れている分を止めれば、ROASの分母が減って数字が底上げされます。ここでは、その無駄をレポートから見つけて、実際に配信から外すところまでを扱います。

2-1. 検索語句と配信面のレポートで無駄な出稿先を洗い出す

無駄な配信先は、勘ではなく2つのレポートで具体的に洗い出せます。検索語句レポートと、ディスプレイやP-MAX(Google広告の全自動配信タイプ)の配信面レポートです。配信面とは、広告が実際に表示されたサイトやアプリの場所を指します。

検索語句レポートには、実際に広告が表示された検索語が並びます。ここで見るのは、設定したキーワードと意図がズレている語句です。たとえば「ギフト ラッピング 無料」で売りたいのに「ラッピング 自作 やり方」で表示され、費用だけ出てCVがゼロ、といった語句。費用は発生しているのにCVに寄与していない語句が、止める第一候補になります。

ディスプレイやP-MAXでは、配信面レポートで実際に広告が出た場所を確認します。アプリの広告枠やジャンルの合わないサイトに配信が偏り、クリックは集まるのにCVにつながっていないケースがあります。クリック単価が安い面ほど費用の割にクリックだけがかさみ、ROASを押し下げます。

線引きの軸は、費用とCVの関係で持ちます。一定の費用を使ってCVが0、あるいはCVはあってもROASが自社の損益分岐点を下回り続けている語句・面。これを「たまたま今月は出なかった」と切り分けるため、判断は単月ではなく複数月のデータで見ます

洗い出しの成果物は、止める候補の語句リストと配信面リストです。費用とCVの判断基準を事前に決めておくことで、除外作業を迷わず進められます。

2-2. 低成果の出稿先を除外設定で止める

洗い出した候補は、除外キーワードと除外プレースメントの設定で配信から外します。感覚で入札単価を下げるのではなく、配信対象そのものから外すのが確実です。

検索側は除外キーワードで対応します。意図とズレる語句を除外キーワードに登録すれば、以降その語句では広告が表示されなくなり、費用が止まります。ディスプレイ・P-MAX側は、成果の出ない面を除外プレースメントやアカウント単位の除外リストに登録します。

止めた後は、しばらく配信の動きを見ます。除外を当てると配信量が減り、自動入札を使っている場合は学習が入り直します。除外の直後に数値が一時的に振れるのは想定内で、数日の動きだけで戻す判断をすると、いつまでも安定しません。除外は一度に大量に当てるより、費用の大きい候補から段階的に進めるほうが、後で影響を切り分けやすくなります。

ここまでで、成果の出ない配信を止めて費用を浮かせた状態になります。

3.訴求とクリエイティブの質を高めてCVRを改善する

訴求とクリエイティブの質を高めてCVRを改善する

CVRは広告だけで決まる数字ではありません。訴求、遷移先、フォーム、価格、在庫と、関わる要素は広く分かれます。この章で扱うのは、そのうち広告側で動かせる部分、つまり流入の質です。

3-1. 広告の訴求と買い手ニーズのズレを把握する

株式会社Rabo(以下、Rabo)に届く相談で多いのが、「クリックは集まっているのにCVが伸びない」というものです。クリック数もクリック率も悪くない。それでも売れないとき、まず疑うのは広告の訴求と、買い手が実際に求めているもののズレです。

ズレは、検索語句と広告文、遷移先で実際に見せている内容を並べると見えてきます。「送料無料」で集めているのに、広告文にもLPにも送料の話が出てこない、といった食い違いです。検索意図に対して、広告が別の約束をしていないかを確認します。

訴求のズレが見つかれば、広告文と遷移先LPの表現を一致させることが、次の作り替えの起点になります。

3-2. クリックの質が上がる訴求に作り替える

訴求を作り替えるときの基準は一つ、ROASを動かすかどうかです。表現の巧拙より、購入意図の高い人が反応する切り口になっているかで判断します。

作り替えは、無駄な配信先の除外とセットで考えると効率が上がります。意図の合わない語句を除外して呼ばない一方で、意図の合う人に届く訴求へ寄せる。入口を絞りながら、残した入口の訴求を強くする動きです。

同じ商品でも、値引きを前に出すか、品質や保証を前に出すかで集まる人が変わります。単価が高く利益率の取れる商品なら、安さより「失敗しない選び方」を訴求したほうが、購入まで進む人が集まりやすくなります。

訴求パターンの作り方やバナーの構成といった制作の手順は、広告クリエイティブの基本|成果を分ける5つの設計原則にまとめます。ここで決めるのは、どの角度で訴求するかまでです。

3-3. 広告とLPのメッセージを揃えて離脱を防ぐ

広告をクリックした人が最初に見るのは、LPの一番上です。そこに広告で見た言葉が見当たらないと、人は「違うページに来た」と感じて戻ります。広告とLPのメッセージが一致していることが、この離脱を防ぎます。

「初回限定30%オフ」で誘っておきながら、LPの冒頭に割引の話がなければ、期待して来た人ほど早く離れます。クリックは取れているのにCVが低いとき、この入口の食い違いが起きていることがあります。広告文の主役と、LPファーストビューの主役を、同じ言葉でそろえます

ファーストビューの先、フォームの項目数、価格の見せ方、在庫表示、表示速度といった着地後の改善は、広告用LP(ランディングページ)の作り方|CVRを上げる構成と要素で扱います。

訴求のズレを直し、入口とLPの言葉をそろえる。ここまでが、広告側からCVRに働きかけられる範囲です。それでも数字が動かないなら、原因は流入の質ではなく、着地後の作り込みにあります。

4.目標ROAS基準での入札と予算配分を組み直す

計測を正し、無駄を削り、訴求を整えたら、最後は予算の配り方です。ここでは、目標とするROASをどう決めるか、そして削って浮いた予算をどこに寄せるかを扱います。

4-1. 目標ROASを基準にした自動入札の運用

Google広告で売上ベースの自動入札を使うなら、戦略名は「目標広告費用対効果」(tROAS)です。現在は「コンバージョン値の最大化」の中で目標広告費用対効果の値を設定する形に統合されています。

この目標値は、願望で決めるものではありません。基準になるのは損益分岐点ROASで、これは「1 ÷ 限界利益率」で逆算できます。基準になるのは損益分岐点ROASで、「1 ÷ 限界利益率」で逆算できます。限界利益率が40%の場合は250%(1÷0.4)です。これを下回ると、広告を回すほど赤字が増える水準です。

ただし、目標を高く置けば利益率が上がるわけではありません。目標ROASを高く設定しすぎると、条件に合う配信が絞られて配信量そのものが落ちます。利益率は良くても売上の総量が小さくなり、事業として物足りない結果になりえます。実績のROASからかけ離れた高い値をいきなり入れず、実績と同水準か、やや上から始めるのが無難です。

目標ROASは、限界利益率から出した分岐点を下限に、配信量とのバランスで決めていきます。

4-2. 除外した配信費を成果の出た広告へ再投下する

無駄な配信を止めて浮いた予算は、そのまま浮かせておくのではなく、成果の出ている配信へ寄せます。割に合わない配信から、成果の出ている配信へ付け替えることで、同じ総額でも全体のROASが底上げされます。

寄せ先は、これまでROASが安定して高い配信や面から選びます。すでに成果が出ている入口を太くするのが、最も確実な配り方です。

ただし、高ROASの配信に寄せすぎると、別の問題が出ます。ROASが高い配信は、多くの場合すでに商品を知っている人や再訪の人を拾っています。ここに寄せきると、新しい顧客との接点が細り、短期の数字は良くても先細りします。予算を集中させるときも、新規獲得の枠は必ず残してください。高ROASの配信だけを正解とせず、新規を取りにいく配信を一定量キープしたうえで、余った分を成果の出た配信に回します。

浮いた予算は成果の出た配信へ、ただし新規の枠は削らないようにします。この配分ができて、削って浮いた費用が次の売上につながる形になります。

まとめ

ROAS改善の4つの観点を整理して振り返るチェックリストのイメージ

ROASの改善は、計測の確認・無駄な配信の除外・訴求の質・予算配分の4観点で整理できます。計測は数字を信用できる状態にする土台、残りの3つはその上で動かすレバーです。表示ROASを実態と合わせ、成果の出ない配信を止め、流入の質を上げ、浮いた予算を成果の出た配信へ配り直す。

本文は理解しやすい順に並べましたが、実際に着手するなら、計測を正し、無駄を削り、配分を寄せ、最後に訴求を磨く流れが動かしやすいはずです。まず数字を信用できるようにし、明らかな無駄を止めて予算を浮かせ、それを成果の出た配信へ寄せる。ここまでは設定作業で比較的早く着手できます。訴求やクリエイティブの磨き込みは効果が出るまで時間がかかるため、土台を整えてから腰を据えて取り組む位置づけです。

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