ネットショップを始めるとき、多くの人がShopifyとBASEで迷います。ただ、この2つは正面からぶつかる競合ではありません。狙っている事業フェーズが違うからです。BASEは初期費用も月額もゼロで、手軽に小さく始めるためのサービス。Shopifyは月額を払って、拡大と本格運用を前提に作り込んでいくためのサービスです。出発点が違えば、向く相手も変わります。
とはいえ「フェーズが違う」だけでは、自分がどちらを選ぶべきかは決まりません。そこでこの記事では、手数料・標準機能・拡張性という3つの軸でBASEとShopifyを並べ、どこで損益が入れ替わり、どこで機能の壁が来るのかを具体的な数字で示します。そのうえで最後は、あなたの事業ならどちらか、まで言い切ります。読み終えたとき、いま選ぶべき1社がはっきりするはずです。
- 1.始めやすいBASE、伸ばすほど安いShopify。手数料は売上規模で逆転する
- 1-1. BASE|初期・月額0円でも、売れるほど手数料が効いてくる
- 1-2. Shopify|月額はかかるが、売上が伸びるほど割安になる
- 1-3. 分岐点|売上いくらで、コストが逆転するか
- 2.追加費用なしで、デザイン・決済・受注管理はどこまでできるか
- 2-1. デザイン・編集|どこまで自由にいじれるか
- 2-2. 決済|支払い手段と、入金までのスピード
- 2-3. 受注・顧客管理|注文処理と顧客データの扱い
- 3.事業が伸びたとき、先に壁が来るのはどちらか
- 3-1. 拡張の手段|標準で足りなくなった時、どう伸ばせるか
- 3-2. 規模・越境|多通貨/多言語と、組織で運用するための機能差
- 4.あなたが選ぶべき1社は、事業フェーズで決まる
- 4-1. BASEが向いている事業
- 4-2. Shopifyが向いている事業
- 4-3. 迷ったら|この1問で決める
- 5.まとめ
1.始めやすいBASE、伸ばすほど安いShopify。手数料は売上規模で逆転する

月額0円で始められるBASEと、月額がかかるShopify。一見BASEが安く見えますが、売上が増えると総コストは入れ替わります。どこで、なぜ逆転するのかを、実際の手数料で見ていきます。
1-1. BASE|初期・月額0円でも、売れるほど手数料が効いてくる
BASEは初期費用も月額も0円、登録したその日に売り始められます。手数料が動き出すのは最初の1件が売れた瞬間からで、スタンダードプランなら売れるたびに実質6.6%+40円が売上から差し引かれます。
内訳は決済手数料3.6%、サービス利用料3.0%、これに1注文あたり40円です。3,000円の商品が1つ売れると、198円+40円で238円。月に100件売れれば、手数料はおよそ2万4千円になります。売上が2倍に伸びれば、手数料もほぼ2倍に増えていきます。
売上が小さいうちは、この仕組みがむしろ心強く働きます。売れなければ手数料はゼロ、固定費もゼロ。在庫を少しだけ用意して、まず数個売れるか試したい立ち上げ期に、金銭的なリスクが残りません。
一方で、売上が伸びるほど手数料の総額は上限なく積み上がります。この「売れた分だけ引かれる」構造をどこで頭打ちにするか。その答えが、グロースプランへの切り替えと、Shopifyとの比較です。
1-2. Shopify|月額はかかるが、売上が伸びるほど割安になる
Shopifyはベーシックプランで月額3,650円。売上がゼロでも固定費はかかります。その代わり決済手数料は国内カードで3.55%と、BASEスタンダードの6.6%よりはっきり低く、売上が増えるほど1件あたりの負担が軽くなります。
固定費型なので、月商が10万円でも100万円でも、月額は3,650円のまま変わりません。増えるのは決済手数料だけです。同じ3,000円の商品なら、Shopifyの手数料は106円。BASEスタンダードの238円の半分以下で、売れば売るほどこの1件あたりの差が効いてきます。
ただし、月の売上が固定費を回収できないうちは割高に感じられます。月商が数万円の段階では、3,650円の月額が重く映る局面もあります。Shopifyが効いてくるのは、売上がある程度の規模に乗ってからです。
もう一点、この低い手数料はShopifyペイメントを利用する前提の数字です。外部の決済サービスを使うと別途取引手数料が上乗せされるため、手数料を抑えたいならShopifyペイメントの利用が前提になります。
まとめると、Shopifyは固定費を払う代わりに、売れた分の取り分を多く残す設計です。固定費を上回るほど売上が出るかどうかが、BASEとの分かれ目になります。
1-3. 分岐点|売上いくらで、コストが逆転するか
結論から言うと、客単価3,000円・国内カード決済なら、月商がおよそ8万円を超えたあたりでShopifyベーシックのほうが安くなります。客単価が下がるほど分岐点も下がり、1,500円なら6万円前後が目安です。
手数料率の差が、固定費を上回るからです。BASEスタンダードは売上の約6.6%+40円、Shopifyベーシックは月額3,650円+3.55%。売上が小さいうちは月額3,650円の重みが勝ち、売上が増えるほど率の差(約3%)が月額を飲み込みます。
客単価3,000円で月商別に並べると、次のようになります(Shopifyペイメント・国内カード前提)。なお、BASE側も売上が伸びればグロースプランに切り替えて決済手数料を2.9%まで下げられます(公式の目安は月商約50万円超)。BASE対Shopifyは「どちらが上か」ではなく、どの規模でどの組み合わせが軽くなるか、という見方が実態に近いといえます。
ご自身の月商と客単価を表に当てはめれば、いまどちら側にいるかが見えてきます。客単価3,000円なら、月商8万円あたりが分かれ目です。
2.追加費用なしで、デザイン・決済・受注管理はどこまでできるか

デザインも決済も、最初は追加費用なしで使えます。問題は、その「無料の範囲」がどこまで届くかです。素の状態でのBASEとShopifyの違いを、まず一覧で並べます。
2-1. デザイン・編集|どこまで自由にいじれるか
見た目を整えるだけなら、どちらも手軽にできます。差が出るのは、その先に作り込む余地がどれだけ残されているかです。
BASEは用意されたテーマを選び、色やロゴ、画像を入れ替えるノーコード操作が中心です。無料のHTML編集Appを入れればコードも触れますが、無料テーマはコード編集の対象外で、本格的に作り込むなら有料テーマかApp上での新規作成が前提になります。Shopifyはどのテーマでもテーマコードを直接編集でき、レイアウトの構造から組み替えられます。
この差は、こだわりが強くなったときに表面化します。BASEは決められた枠の中をきれいに整えるのが得意で、立ち上げ期のスピードに向きます。Shopifyは初期の学習コストと引き換えに、ブランドの世界観を細部まで反映させやすい。デザインに将来どこまで踏み込みたいかで、向き不向きが分かれます。
まず形にしたいならBASE、長く育てて作り込みたいならShopify。どちらも無料テーマなら0円から始められるので、実際に触って自由度の手触りを確かめるのが確実です。
2-2. 決済|支払い手段と、入金までのスピード
支払い手段は、標準で揃う幅にいちばん差が出ます。BASEは国内向けの決済が申込も審査もなしで最初から並び、Shopifyはカード系が中心です。
BASEの「BASEかんたん決済」は、カード・コンビニ・キャリア決済・後払い・PayPay・Amazon Pay・PayPalまでを、手続きなしで使える状態で用意します。日本の買い物客が慣れたコンビニ払いや後払いが標準で入っていることは、立ち上げ期の取りこぼしを減らします。Shopifyの標準はShopifyペイメント(カードやApple Pay/Google Payなど)が軸で、Amazon Payは2025年1月に日本のストアで終了しました。
もう一つの違いは、入金の動き方です。BASEは売上を自分で振込申請し、申請から10営業日で入金、1回ごとに250円の振込手数料がかかります。Shopifyは毎週か毎月の自動入金で、毎週なら決済から5〜11日、振込手数料はかかりません。少額をこまめに引き出すとBASEは手数料が気になり、操作不要で自動入金されるのがShopifyの特徴で、運用負荷に違いが出ます。
慣れた決済を最初から幅広く出したいならBASE、入金を自動で回したいならShopify。どちらも追加費用なしでこの状態に届きます。
2-3. 受注・顧客管理|注文処理と顧客データの扱い
注文が入ってから発送までの一連の流れは、BASEもShopifyも標準でこなせます。差がつくのは、顧客の情報を後から使える形で持てるかどうかです。
注文の一覧管理、在庫の自動減算、注文確認メールといった基本は両方に揃っています。違いは顧客データの扱いで、Shopifyは購入者をセグメントに分けたり、顧客リストをCSVで書き出したりが標準でできます。販売レポートも用意されますが、詳細さはプランによって変わります。BASEは注文と購入者の管理がシンプルにまとまり、必要な操作に迷いません。
この差は、売った後に効いてきます。リピート施策やメール配信で過去に買った人へ届けたくなったとき、データを持ち出して使えるかが分かれ目です。今はまだそこまで要らない、まず売ることに集中したい段階なら、BASEのシンプルさはむしろ利点になります。
注文処理はどちらも合格点。顧客データを将来の武器にしたいかどうかが、ここでの選び方になります。
3.事業が伸びたとき、先に壁が来るのはどちらか

売上が伸びれば、標準機能だけでは足りなくなる場面が必ず来ます。ただし「壁」が来る場所は、BASEとShopifyで違います。どこで頭打ちになり、その先どこまで伸ばせるかを見ていきます。
3-1. 拡張の手段|標準で足りなくなった時、どう伸ばせるか
足りなくなったとき、伸ばせる幅が大きく違います。BASEはBASE Appsの枠内で機能を足し、Shopifyはアプリ・API・コードで外部システムまでつなげられます。
BASE Appsは拡張機能をインストールして使う仕組みで、用意された数十種規模のApp群から選ぶ形です。決済はBASEかんたん決済に固定され、外部の決済代行や基幹システムを自由に差し込む設計ではありません。Shopifyはアプリストアが1万を超える規模で、APIやテーマコードを使って外部サービスと連携できます。標準では弱いコンビニ払いや後払いも、KOMOJUなどの外部決済サービスを追加して揃えられます。
壁の正体が違います。BASEは欲しい機能がAppに無ければそこで頭打ち、というわかりやすい上限があります。Shopifyは多くの要望をアプリか開発で実現できる反面、足すほど月々のアプリ費用と運用の手間が積み上がり、コストと管理が次の壁になります。
やりたいことがプラットフォームの範囲に収まるなら、BASEは範囲が決まっている安心感があります。範囲を超えて伸ばし続けたいなら、選択肢の広いShopifyが向きます。
3-2. 規模・越境|多通貨/多言語と、組織で運用するための機能差
規模が出て越境と複数人運営に踏み込むと、差がはっきりします。Shopifyは標準で対応し、BASEはAppでの補強が前提になります。
越境では、ShopifyはShopify Marketsで多通貨(現地通貨での決済)や多言語に標準で対応します。BASEは「英語・外貨対応App」で表示を英語にし外貨を概算表示できますが、支払いは日本円のままで、商品名や説明は自動翻訳されません。表示の対応と、現地通貨で売り切る対応とでは、踏み込みの深さが変わります。
組織での運用も差が出ます。Shopifyはプランごとにスタッフアカウントが付き、グローで5名、アドバンスで15名、Plusは無制限、ベーシックはオーナーのみで追加できません。BASEは「スタッフ権限管理App」で担当者ごとの権限を設定する形で、役割分担に対応します。
個人や少人数で国内向けに売るうちは、どちらでも問題なく回ります。違いが効いてくるのは、チームで役割を分け、海外比率を上げようとした瞬間です。標準でそこまで入っているかどうかが、追加の手間とコストを左右します。
国内・少人数のあいだはBASEでもShopifyでも成り立ちます。越境と組織化が現実の課題になったとき、Shopifyの「最初から入っている」差が表面化します。
4.あなたが選ぶべき1社は、事業フェーズで決まる

ここまでの3つの軸を、最後はあなたの事業に当てはめます。いまのフェーズによって、合うサービスは変わります。
4-1. BASEが向いている事業
在庫を少しだけ用意して、まず売れるか試したい。注文も自分一人でさばける。そんな段階なら、BASEが合います。
具体的には、立ち上げ直後で月商が数万円から8万円に届かない時期、ハンドメイドや副業で在庫を少量だけ持つ規模、注文対応を一人で回したい個人です。この時期に効くのは、金額よりも身軽さです。試しに数十個だけ出して反応を見る、という動き方に、初期費用も解約コストもないBASEはよく噛み合います。
月商8万円がまだ視界に入らない、あるいは売れ行きが読めないなら、BASEで始めて様子を見るのが堅い選択です。
4-2. Shopifyが向いている事業
月商8万円を安定して超え、これからも伸ばす計画がある。そこまで来たら、Shopifyの月額が投資として回り始めます。
客単価と件数で固定費を回収できる事業、ブランドの世界観をデザインで作り込みたい事業、外部システムと連携したい事業、海外比率を上げたい事業、チームで役割を分担したい事業。これらの要件は、Shopifyの低い手数料率と、標準の拡張・越境機能が受け止めます。
伸びる前提なら、早めに移ったほうが手数料の差が効きます。売上が大きくなるほど、BASEの6.6%とShopifyの3.55%の差は、無視できない金額になります。作り込みと拡張を前提にするほど、Shopifyの設計が活きてきます。
4-3. 迷ったら|この1問で決める
迷ったら、こう自問してください。「半年後、月商8万円を超えていそうか」。超える見込みがあるならShopify、読めない・下回りそうならBASE。これが一番シンプルな分かれ目です。
月商8万円前後が、手数料の総額が逆転するおおよそのラインだからです(客単価3,000円・カード決済の場合)。これを超えて伸びるなら固定費は回収でき、届かないならBASEの0円スタートが効きます。
もう一つ、覚えておくと楽な逃げ道があります。BASEで始めて、伸びてきたらShopifyへ移る、という順番も正解です。まず売れるか確かめ、軌道に乗ってから移行する。ただし移行には商品や顧客データの移行作業が伴うので、規模が大きくなってからだと手間も増えます。
いまの正解は、事業フェーズが変われば変わります。まず8万円の問いに答え、超えそうならShopify、読めないならBASE。それで十分に動き出せます。
5.まとめ

コストは、客単価3,000円なら月商8万円前後で逆転します。それまではBASEの固定費ゼロが軽く、超えればShopifyの低い手数料率が効いてきます。標準機能は、日々の販売ならどちらも回りますが、デザインの作り込みと顧客データの活用ではShopifyに幅があります。拡張と越境は、App内で完結するBASEの安心感と、外部連携まで伸ばせるShopifyの自由度に性格が分かれます。最後は一つの問いに集約できます。半年後、月商8万円を超えていそうか。超えるならShopify、読めないならBASEで始めて、伸びたら移る。事業のいまの立ち位置が、選ぶべき1社を決めます。












