ECサイトリニューアルでRFPを書く方法|「機能」より「課題」を書くべき理由

  • URLをコピーしました!

ECサイトのリニューアルを検討し始めたとき、まず何をするか。多くの場合、知人の紹介やWeb検索で制作会社を数社見つけて、「こんなサイトにしたいんですが、いくらくらいかかりますか?」と相談するところから始まります。ただ、この”なんとなく相談”には落とし穴があります。

伝える情報がそろっていないまま声をかけると、返ってくる提案の粒度も方向もバラバラになり、比較しようがない。結果、「どこに頼んでも同じに見える」か「どれも違いすぎて判断できない」のどちらかに陥ります。この問題を防ぐのがRFP(提案依頼書)です

本記事では、ECサイトのリニューアルに絞って、RFPに何をどう書けば制作会社から的確な提案が返ってくるのかを、書き始める前の準備から項目の書き方、よくある失敗パターンまで順を追って整理します。

1.RFPを書き始める前に、既存サイトの課題と要件を整理する

ECサイトリニューアルの課題を4観点でホワイトボードと付箋に整理するイメージ

RFPを書く、と言われると、いきなりWordやGoogleドキュメントを開いて「プロジェクト概要」と打ち始めたくなります。でも、その前にやることがあります。いま動いているECサイトの何に困っていて、何を変えたいのかを棚卸しすること。ここが曖昧なままRFPを書き始めると、項目を埋めているはずなのに「結局何がしたいのか分からない」と制作会社に言われる羽目になります

1-1. 課題を4つの観点で洗い出す

「なんとなく使いづらい」「売上が伸びない」。リニューアルの動機はたいていこうした漠然とした不満から始まります。ただ、この粒度のままRFPに書いても、制作会社は対処のしようがありません。「使いづらい」が、ユーザーがカートに入れてから購入完了まで6ステップかかるUI上の問題なのか、管理画面の在庫更新に毎日2時間取られる運用の問題なのかで、提案の方向性はまるで変わります。

不満の正体を分解するには、「売上・集客」「UI/UX」「運用・業務フロー」「システム・インフラ」の4つの観点を使います。

売上・集客:検索流入の推移、広告経由のCVR、リピート率、客単価の変化

UI/UX:カート離脱率、スマホでの購入完了率、サイト内検索の利用状況

運用・業務フロー:受注処理にかかる時間、在庫更新の手順、問い合わせ対応の負荷

システム・インフラ:ページ表示速度、現行プラットフォームのサポート期限、外部システムとの連携状況

Raboに届くリニューアル相談の中にも、「売上が落ちてきたから全面リニューアルしたい」という声は少なくありません。ただ、話を掘り下げていくと、売上低下の要因はサイトのデザインではなく、広告出稿を止めた時期と重なっていた──というケースがあります。課題を分解せずに「全部直す」前提で進めると、本来必要のない作業に予算と時間を使うことになります。

アクセス解析の数値、現場スタッフの声、問い合わせ履歴。材料はすでに社内にあるはずです。4観点のどこに課題が集中しているかを見れば、リニューアルの重心──デザイン刷新なのか、裏側の業務改善なのか──が浮かび上がってきます

1-2. 「変えること」と「残すこと」の切り分け

リニューアルの見積もり依頼が届いたとき、制作会社がまず確認したいのは「どこまで作り替えるのか」です。ドメインは変えるのか。顧客データは引き継ぐのか。ブログのURLは維持するのか。この情報がないと、制作会社は最大のスコープ──フルリニューアル──を前提に見積もるしかありません。

「残す部分」を先に決めたほうが、スコープも予算も早く固まります。RFPに「変えたいこと」だけを並べると、見積もり額は自然と膨らむ。しかし実際には、ドメインはそのまま使う、既存の商品データは移行する、長年かけて育てたコンテンツのSEO評価は引き継ぎたい──こうした「残したいもの」が必ずあるはずです。

切り分けの基準はシンプルです。今使えているか、使われていないか。以下の4領域で整理すると抜け漏れが出にくくなります。

SEO資産(ドメイン・流入のあるページ):検索順位がついているURLはドメインごと引き継ぐ。リダイレクト設計の工数も見積もりに含めてもらえる

顧客・商品データ:会員情報、購入履歴、商品画像・説明文は移行か流用かを明記する。品質に問題がなければ「流用」と書くだけで撮り直しの工数が消える

ブランド要素:ロゴ・カラー・トンマナは残す。レイアウトやページ構成は刷新対象。この線引きがあるとデザイン提案の方向性が定まる

運用フロー(決済・配送):現行の仕組みで問題なければ「踏襲」と書く。踏襲と分かれば、制作会社は連携仕様の確認だけで済む

この一覧は、RFPの「要件」欄にほぼそのまま転記できます。残すものが決まった時点で、制作会社に依頼する作業範囲の大半は固まっている。逆に言えば、ここが曖昧なまま送ると、提案も見積もりも「念のため全部含めた」最大値になります。

2.RFPに書くべき項目と、良い提案が返ってくる書き方

RFPの基本構成と項目を書類とノートPCで整理する制作会社向け資料作成のイメージ

課題と要件の整理が終わったら、いよいよRFPの作成に入ります。「何を書けばいいのか分からない」という声をよく聞きますが、構成自体はそれほど複雑ではありません。問題は、各項目に何をどの粒度で書くか。同じ項目名でも、書き方ひとつで返ってくる提案の質がまるで変わります。

2-1. RFPの基本構成と各項目の役割

ECサイトリニューアルのRFPは、8つのブロックで構成するのが基本です。各ブロックが制作会社の提案のどこに効くかを押さえておくと、書くべき粒度が見えてきます。

項目提案への効き方書き方のコツ
会社・事業の概要事業規模・業種・商材を伝える。ここが薄いと「誰に向けたECか」が分からないまま提案が組まれる年商規模、主力商材、販売チャネル(実店舗併用か等)を簡潔に
背景・課題提案の方向性を決める最重要セクション次のH3で詳述。数字を添えて書く
ゴール制作会社がゴールから逆算して提案を組む指針定量(CVR○%改善)と定性(スタッフ1人で運用可)の両面で
要件必須機能と「あれば嬉しい」の区別が見積もり精度を左右確定済みは機能名で、未確定は課題で書く(H2-3で詳述)
予算・スケジュール現実的な提案を引き出す枠組みレンジで提示する(次のH3で詳述)
プロジェクト体制制作会社が窓口と意思決定ラインを把握し、進行計画を組める担当者名・決裁者・社内承認フローを明記。兼務の場合は稼働割合も
契約条件トラブル防止と信頼構築。後出しにすると交渉が難航しやすい著作権の帰属先、秘密保持の要否、公開後の不具合対応期間を記載
選定基準・提案形式比較のしやすさを左右する(H2-3で詳述)評価項目と提案書に含めてほしい項目を列挙

分量の目安としては、A4で5〜10ページ程度。体裁が整っている必要はありません。パワーポイントでもWordでもGoogleドキュメントでも、制作会社が読んで「何を提案すればいいか」が分かれば、フォーマットは問いません。

8ブロックのうち、「プロジェクト体制」と「契約条件」は見落とされがちですが、ここが書かれているRFPは、制作会社の側から見ると「進め方まで考えている発注者だ」と映ります。提案の丁寧さにも差が出る部分です。

2-2. 背景・課題・ゴールは最も丁寧に書く

8つのブロックの中で、なぜこの3項目だけ特別扱いするのか。理由は単純で、制作会社が提案の方向性を決めるとき、最初に読み込むのがこの3項目だからです。ここの解像度がそのまま提案の具体性を決めます。

制作会社は、背景と課題を読んで「この会社は何に困っていて、何を解決すれば喜ばれるか」を判断します。ここが「売上を上げたい」「今のサイトが古い」程度では、提案は総花的にならざるを得ません。一方、「2年前にECを立ち上げ、月商500万円まで伸びたが、直近6ヶ月は横ばい。スマホ経由のCVRがPC比で40%低く、カート離脱率が業界平均より高い」と書かれていれば、制作会社はスマホ体験の改善を軸に具体策を提案できます。

書き分けのポイントは3つ。

背景は「なぜ今リニューアルを検討しているのか」。事業フェーズの変化、プラットフォームのサポート終了、取り扱い商材の拡大など、リニューアルに至った経緯を書きます。

課題は「現サイトの何が、どう困っているか」。前章で洗い出した4観点の課題をここに落とし込みます。「在庫更新に毎日2時間かかっている」「スマホの購入完了率がPCの半分以下」のように、できるだけ数字を添えると伝わりやすくなります。

ゴールは「リニューアル後にどうなっていたいか」。定量目標(月商○万円、CVR○%改善)と定性目標(ブランドの世界観が伝わるデザイン、スタッフ1人で運用できる管理画面)の両方があると、制作会社は提案の着地点をイメージしやすくなります。

背景・課題・ゴールが丁寧に書かれたRFPを受け取ると、制作会社の動きが変わります。たとえば「スマホCVRが低い」と明記されていれば、提案前にGoogleアナリティクスの共有を依頼し、離脱ポイントを特定してから改善案を組む──という踏み込んだ提案ができる。3行で済まされたRFPでは、そこまで手をかけるかどうかの判断がつきません。

背景・課題・ゴールは、制作会社にとっての「提案の設計図」です。他の項目が多少粗くても、この3項目さえ書き込まれていれば、制作会社は的を絞った提案を組めます。RFP全体の中で、最もコストパフォーマンスの高い投資先です。

2-3. 予算とスケジュールは「幅」で伝える

予算は「300〜500万円」、スケジュールは「○月公開が理想、最遅で○月」のように、レンジで書くのが最も提案の質と現実味を両立させるやり方です。

RFPでよく見かけるのが「予算:ご提案ください」「スケジュール:応相談」という書き方。一見フラットに見えますが、制作会社からすると「いくらの提案を組めばいいのか分からない」状態です。結果、ある社は200万円のミニマム構成、別の社は800万円のフル構成で出してきて、比較のしようがなくなります。

レンジで伝えるメリットは2つあります。

1つ目は、制作会社がその予算内で「何を優先して何を後回しにするか」を提案に盛り込めること。「300〜500万円」と書かれていれば、300万円ならこの構成、500万円まで使えるならここまでできる、という段階的な提案が可能になります。

2つ目は、見積もりの妥当性を判断しやすくなること。すべての提案が同じ予算幅の中で組まれるため、「何にいくら使うか」の配分の違いが浮き彫りになります。

「予算を先に出すと足元を見られるのでは」と心配される方もいます。ただ、制作会社の立場で考えると、予算が分からないまま提案を組むのは「客席の人数を聞かずに料理を用意する」のに近い。2人前なのか10人前なのかが分からなければ、食材の選び方も品数も決まりません。結果、当たり障りのないコースを出すしかなくなる。予算レンジは、制作会社が本気の提案を組むための前提条件です。

予算を「未定」にしたまま送ったRFPと、レンジを書いたRFPでは、返ってくる提案のページ数からして違います。予算開示は足元を見られるリスクではなく、提案精度を上げるための投資と捉えてください。

3.提案が噛み合わないRFPに共通する2つのパターン

提案依頼書への返答がバラバラで比較に悩む書類を並べたデスクのイメージ

RFPを送ったのに、返ってきた提案がどれもピンとこない。制作会社の実力が足りないのではなく、RFPの書き方に原因があるケースは珍しくありません。提案が噛み合わないRFPには、共通する2つの書き方のクセがあります。

3-1. 要件を機能リストで書くと、提案の余地が消える

「会員登録機能」「商品レコメンド機能」「レビュー投稿機能」。Excelの行に機能名がずらっと並び、各行に「必須/任意」の列がついている──。こうしたRFPを受け取ったとき、制作会社がやることは1つ。各機能の工数を見積もって、単価を掛けて、合計金額を出す。それだけです。

機能名の一覧をRFPに並べると、制作会社に「見積もり」は依頼できても「提案」は引き出せません

本来、制作会社に期待したいのは「あなたの課題を解決するには、こういう手段がありますよ」という提案です。たとえば「リピート率が低い」という課題を書けば、ある会社はポイント制度を提案し、別の会社は定期購入の導入を提案し、また別の会社はメールマーケティングの強化を提案するかもしれない。どの手段が最適かは、制作会社の知見と実績によって変わります。

ところが「ポイント機能を実装してください」と書いてしまうと、その時点で手段が固定される。もっと費用対効果の高い解決策があったとしても、提案の余地がありません。各社の違いは金額だけになり、提案力やアイデアの差が見えなくなります。

もちろん、「決済はクレジットカードとコンビニ払いに対応」「配送はヤマト運輸と佐川急便を使う」のように、手段が確定している要件は機能レベルで書いて問題ありません。使い分けの基準は、解決策が決まっているかどうか。決まっていれば「機能」で書き、決まっていなければ「課題」で書く。この1つのルールを意識するだけで、RFPの性質が変わります。

RFPは「これを作ってください」と指示する発注書ではなく、「この課題を一緒に解決してほしい」と伝える依頼書です。手段を指定すればするほど、制作会社は「作業者」になる。課題を共有すれば、制作会社は「提案者」になる。どちらの関係を望むかで、RFPの書き方は変わります。

3-2. 比較軸なしで送ると、返ってくる提案がバラバラになる

RFPに選定基準を書いていないと、各社は自分たちの得意領域を前面に出して提案を組みます。結果、提案のフォーカスがバラバラになり、横並びで比較できなくなります

デザインに強い会社はビジュアル提案に力を入れ、マーケティングに強い会社は集客戦略を厚く書き、開発に強い会社はシステム構成図を中心に据える。どれも間違ってはいませんが、評価する側からすると「同じ土俵で比べられない」状態です。

これを防ぐには、RFPに選定基準の項目を明記します。

実績:同業種・同規模のEC構築経験

提案内容:課題に対する解決策の具体性

運用サポート体制:公開後のサポート範囲・対応速度

コスト:初期費用と月額ランニングコストの内訳

スケジュール:マイルストーンの現実性

重み付けまで細かく決める必要はありません。ただ、「運用サポートを重視します」「実績よりも提案内容を重視します」のように、何に比重を置いているかを1〜2行で伝えるだけで、制作会社は提案の力の入れどころが分かります。

補足:提案フォーマットを指定する

選定基準と並んで効果的なのが、提案書のフォーマットをそろえることです。「以下の項目を含めてください」とRFPに記載するだけで十分。たとえば「提案の概要(A4 1枚)」「スケジュール」「概算見積もり(項目別)」「体制図」「類似実績2件以上」のように指定すれば、同じ枠組みの中で各社の違いが浮かび上がります。

選定基準が明文化されていると、社内の提案評価が「好み」ではなく「根拠」で進みます。「総合的に判断します」は聞こえはいいですが、複数の関係者が提案を読んだとき、全員が違う軸で評価して議論が収束しない──という事態を招きがちです。選定基準は、制作会社への指針であると同時に、自社の意思決定を通すためのツールです。

4.よくある質問(FAQ)

4-1. Q1. RFPは何社に送るのが適切ですか?

3〜5社が目安です。2社以下だと比較材料が少なく、6社以上になると提案の読み込みと比較に時間がかかりすぎます。事前にWebサイトや実績を見て候補を絞ってからRFPを送ると、質の高い提案が集まりやすくなります。

4-2. Q2. 社内にEC専任の担当者がいなくてもRFPは書けますか?

書けます。むしろ、EC構築の経験がない人が書いたRFPのほうが、課題やゴールの記述が率直で伝わりやすいケースもあります。技術的な要件や実現手段を書く必要はありません。制作会社が提案すべき領域です。

ただし、1つだけ注意があります。RFPの作成者と、プロジェクトの意思決定者が異なる場合は、「誰が最終判断するのか」「社内承認のフローと所要期間」をRFPに書いておくこと。制作会社が提案を出したあと、決裁に2ヶ月かかる──という事態を防げます。

4-3. Q3. RFPにデザインの方向性やトンマナは書くべきですか?

書いておくと提案の精度が上がります。ただし「かっこいいデザインにしてほしい」では伝わりません。参考にしたいサイトのURLを2〜3件添え、それぞれ「何が気に入っているか」を一言添えるのが実用的です。ブランドガイドラインがあれば、PDFで添付すればそれで十分です。

5.まとめ

ECサイトリニューアルに向けた要件定義の第一歩としてアクセス解析を開くノートPCのイメージ

RFPは、制作会社の提案力を引き出すための依頼書です。返ってくる提案の質は、RFPの書き方で大部分が決まります。

やるべきことを振り返ると、まず既存サイトの課題を4つの観点で棚卸しし、「変えること」と「残すこと」を切り分ける。次に、背景・課題・ゴールを丁寧に書き、予算とスケジュールをレンジで伝える。そして、選定基準を明記して、提案を比較できる状態を作る。

最初の一歩は、アクセス解析を開くことです。直近半年の流入経路別CVR、スマホとPCの購入完了率、カート離脱率。この3つの数字を確認するだけで、「売上・集客」と「UI/UX」の課題が見え始めます。数字が手元にそろったら、4観点の整理に30分もかかりませんので、ぜひ実践してみてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

お問い合わせ

関連記事

おすすめ記事

Copyright © Rabo Inc. All Rights Reserved.