今回のShopify Editions Summer ’25で、B2B取引はどこまでネイティブに、どこまでラクになったのか?
2025年夏に公開されたHorizonsでは、150超の新機能の中でもB2B周りが過去最大級に強化 されました。
アップデートにより、従来は外部アプリやERP連携に頼っていた「大量発注」「与信後払い」「顧客別価格」「複数ロケ在庫」のワークフローを Shopify 管理画面だけで完結できるようになっています。
本記事では、既にShopifyを運用しているEC担当者 が「自社にB2B機能を入れるべきか」「入れるならどのパターンが最短か」を判断できるよう、解説していきます。

- 1.Shopify Editions Summer ’25 概要とB2B強化の位置づけ
- 1-1. Horizons アップデート全体像
- 1-2. なぜ今B2B機能なのか?国内卸売EC市場の潮流
- 2.追加・強化されたB2B機能7選
- 2-1. 企業アカウント階層の拡張(会社/支店/部署)
- 2-2. B2B Bulk Checkout ─ 大量発注の一括カート&CSV注文
- 2-3. 見積(Quote)→承認→請求フローの自動化
- 2-4. 決済条件:後払い・与信枠・複数通貨 Net Terms
- 2-5. ボリューム価格&契約別カスタム価格リスト
- 2-6. マルチロケーション在庫&分割配送ロジック
- 2-7. スタッフ権限テンプレート/Flow 連携による承認ワークフロー
- 3.何ができるようになったか 機能別ユースケース
- 3-1. 卸売向け専用ポータルをノーコードで開設
- 3-2. 受注処理80%時間短縮:CSV/EDI 代替として
- 3-3. 定期・都度 混在モデルで LTV 最大化
- 3-4. 海外法人への多通貨請求とDDP配送
- 4.どんな業種に向いている? 導入メリット
- 5. 導入判断と実装パターン
- 5-1. 現行システム/業務フローの棚卸し
- 5-2. B2Bチャネル拡張か置き換えか
- 5-3. 差別化機能とオペレーション最適化の優先度
- 5-4. 段階的導入ロードマップ(MVP→横展開)
- 5-5. 外部委託と内製化の分岐点
- 6.まとめ
1.Shopify Editions Summer ’25 概要とB2B強化の位置づけ
Shopify Editions Summer ’25は、テーマ生成AIからチェックアウト、POS、Shopアプリまで 150以上の機能強化 を一挙に投入した過去最大級のアップデートです。中でも今年は「B2Bコマースをネイティブに運用できる唯一のSaaSへ」というメッセージが前面に打ち出され、これまで外部アドオンやERP連携に頼っていた卸売ワークフローが管理画面だけで完結できるレベルに到達しました。
1-1. Horizons アップデート全体像
Horizons アップデート全体では、デザイン基盤・テェックアウト・Market・運用連携などの領域が進化し、B2Bへもインパクトを与えています。また、B2B on ShopifyがPlus専用の一部機能からStandardプランでも段階的に使えるコア機能へ昇格。企業アカウント階層・Bulk Checkout・Net Terms など、従来アプリ依存だった領域がネイティブ化しました。
1-2. なぜ今B2B機能なのか?国内卸売EC市場の潮流
[注目の理由]
?市場規模が急拡大
経産省の最新調査によれば、2023年の国内B2B-EC市場は 465.2 兆円(前年比 +10.7%)、EC化率は 40.0% に到達。卸売企業の2社に1社が「オンライン受発注が標準プロセス」と回答しています。(※1)
?省人化+多チャネル要求の高まり
・小売チャネルが細分化し、バルク発注・直送混在 など注文形態が多様化。
・人手不足を背景に CSVアップロードや自動請求書発行といったノーオペレーション機能のニーズが急増。
?海外卸の伸長と越境課題
EU/UKへの輸出で課題となっていたVAT番号検証やリバースチャージ対応がSummer ’25で自動化。越境ハードルが一気に下がり、「国内→海外B2B」参入障壁が縮小しました。
?中堅メーカーの直販+卸ハイブリッド化
D2C で獲得した小売バイヤーを自社ポータルに引き込み、同一ストアでDTCとB2Bを併存させる事例が増加。今回のアップデートでMarkets×B2B×ログイン制御がシームレスに繋がり、このモデルを最小構成で実現可能に。
??Shopify Editions Summer ’25 は、国内卸売 ECの主流課題(大量発注・与信後払い・多通貨税制・在庫分割配送)をネイティブ機能で解決する初の大型リリースです。これにより、従来はERP専用ポータルやスクラッチ開発が必要だったB2Bサイトを 「最短2週間・追加コストほぼゼロ」で立ち上げる 選択肢が現実的になりました。
(※1)経済産業省 https://www.meti.go.jp/press/2024/09/20240925001/20240925001.html
Shopify構築完全ガイド|スキル・準備・設定方法を徹底解説!についてはこちらの記事もぜひご覧ください!

2.追加・強化されたB2B機能7選
Shopify Editions Summer ’25 Horizonsの公式ページでは、B2B取引をさらにネイティブにする下記7つのアップデートが紹介されています。ここでは公式情報をベースに、機能概要と導入メリットをコンパクトに整理しました。
2-1. 企業アカウント階層の拡張(会社/支店/部署)

複数の B2Bマーケット を作成し、市場ごとに商品カタログ・価格・通貨・ストアテーマを独立管理できます。管理画面のView asでバイヤー視点を即時プレビュー可能。Plus 限定機能です。
[メリット]
・北米、EU などリージョン別卸売ストアを1店舗で運用
・同じSKUでも市場ごとに画像・説明を差し替えられる
[簡単に言うと…]
本社一括請求・支店直送など、日本のややこしい取引形態をそのままシステム化
2-2. B2B Bulk Checkout ─ 大量発注の一括カート&CSV注文

EU/UKのVAT番号を管理画面でリアルタイム検証し、要件を満たす取引先には税抜価格を自動適用。コンプライアンスリスクを大幅に低減します。
[簡単に言うと…]
電話・FAX・Excel入力が不要になり、1000行の注文でも数秒で完了
2-3. 見積(Quote)→承認→請求フローの自動化

無料アプリCheckout Blocksと連携し、B2Bだけに「?30,000 以上で購入可能」など最小・最大発注金額をGUIで設定可能。カゴ落ち防止アラートも自動表示。
[簡単に言うと…]
見積PDFを作ってメールでやり取り…の手間がゼロになる
2-4. 決済条件:後払い・与信枠・複数通貨 Net Terms
これまでワークアラウンドが必要だったギフトカード商品を、B2B専用カタログに追加 → レポートも標準対応。卸先が自社販促用カードをまとめ買いできるようになります。
[簡単に言うと…]
掛売の台帳管理や為替換算を自動化、未回収リスクを見える化
2-5. ボリューム価格&契約別カスタム価格リスト
公式NetSuite × ShopifyB2B連携がアップデートされ、企業・注文・PO 番号・支払条件(Net Terms)を双方向同期。外部middlewareなしで基幹システムとデータ一貫性を保てます。
[簡単に言うと…]
複雑な掛率表やExcel計算がいらなくなる
2-6. マルチロケーション在庫&分割配送ロジック
QuickBooks連携や共同購買、ルックブック生成などB2Bcompatibleに公式認定されたアプリが9本に増加。カスタム開発を抑えつつ機能拡張が行えます。
[簡単に言うと…]
在庫が分散していて出荷が遅れるのを防ぎ、送料の見落としも減らせる
2-7. スタッフ権限テンプレート/Flow 連携による承認ワークフロー
サプライヤー/リテーラー双方が参加するShopify Collectiveで
・販売実績ゼロでも参入可(最低売上要件を撤廃)
・仕入先検索&レコメンド精度が向上
これにより、小売バイヤーが新規ブランドを調達しやすくなり、卸売チャネルの開拓効率がアップします。
[簡単に言うと…]
社内の申請フローを自動化しつつ、新規取引先探しもワンクリックで完了
Shopify構築完全ガイド|スキル・準備・設定方法を徹底解説!についてはこちらの記事もぜひご覧ください!


3.何ができるようになったか 機能別ユースケース
Horizonsで追加されたB2B機能は 「ポータルをすぐ開ける」「発注を一括で流し込める」「定期×スポット購買を併存できる」「越境請求・配送を自動化できる」 という4つの実務課題を一気に解決します。ここでは典型的なユースケースを交えながら、導入すると何が変わるのかを具体的にイメージできるよう整理しました。
3-1. 卸売向け専用ポータルをノーコードで開設
[シナリオ]
社名・担当者ごとにログイン権限を付与し、契約価格だけを表示する仕切り価格ポータルを立ち上げたい。
[どう実現できる?]
・B2B on Shopify を有効化すると、企業アカウント/ロケーション別に閲覧制御されたカタログを作成し、同じストア内でD2CとB2Bを切替え表示できます。
・Markets for B2Bと組み合わせれば、取引先ごとにテーマ・言語・通貨まで分岐可能。
[得られる効果]
従来2~3か月かかっていた卸専用サイトの構築が最短2週間に短縮。既存D2Cページをコピー&調整するだけなので、デザイン外注コストも抑えられます。
3-2. 受注処理80%時間短縮:CSV/EDI 代替として
[シナリオ]
SKU を型番入力して数量をまとめてカート投入、あるいは CSV をアップロードして 1,000 行以上の発注を一気に流し込みたい。
[どう実現できる?]
・テーマに Quick Order List セクションを追加すると、表形式で SKU/数量を入力→ワンクリックでカートに反映。
・公式 B2B compatibleアプリExtend B2B Buying がCSVアップロードと高速検索をサポート。
[得られる効果]
FAX・電話を介した手入力を排除し、発注入力?確認メール送信までの事務工数を 体感で半日→数分 に短縮。誤入力や在庫照合ミスも激減します。
3-3. 定期・都度 混在モデルで LTV 最大化
[シナリオ]
リピート商材は定期便、販促アイテムは都度購入、同じカートでまとめて請求したい。
[どう実現できる?]
・ShopifyのサブスクリプションAPI はワンタイム商品とのミックスカートを標準サポート。顧客は1回のチェックアウトで両方の決済を完了できます。
・B2B/D2C を一つのストアで運営できるため、定期便はバイヤー契約価格で、ノベルティは小ロット都度発注というハイブリッド運用もコード不要。
[得られる効果]
平均注文金額を押し上げながら、定期便で継続LTVをロックイン。加えて在庫・ポイント・ストアクレジットが単一アカウントに集約され、顧客体験がシームレスになります。
3-4. 海外法人への多通貨請求とDDP配送
[シナリオ]
EU 法人に EUR 建てで掛売りし、関税・消費税を DDP (Delivered Duty Paid) で先払いしたい。
[どう実現できる?]
・Summer ’25 でマルチカレンシー決済/出金 が拡張。130 + 通貨で請求し、最大8通貨で銀行着金できるため、為替手数料を最小化。
・Shopify Shipping では DHL Express 等の DDP ラベル を購入でき、関税・VAT をチェックアウトで徴収しておけば着荷遅延や追加請求を防止。
[得られる効果]
・為替転換と関税立替のキャッシュアウトを抑え、財務リスクを可視化。
・バイヤーは「総額確定」で安心して発注でき、再輸送・拒否受取のコストを削減。
Shopify構築完全ガイド|スキル・準備・設定方法を徹底解説!についてはこちらの記事もぜひご覧ください!


4.どんな業種に向いている? 導入メリット
日本のB2B-EC市場は、食品製造・産業機器・卸売 が牽引しており、いずれも「大量 SKU × 取引条件の複雑さ」がボトルネックになっています。Horizons の新機能は、まさにこの複雑取引をノーコードで捌く設計になっているため、以下の業種で早期リターンが見込めます。
[ファッション/アパレル卸](季節ごとにカラー・サイズを展開)
??課題
・SKU が膨大で発注ミスが多い
・店舗ごとに発注ロット・掛率が異なる
??解決方法
Quick Order List + Volume Pricing で
型番コピペ→一括カート/数量階段価格を自動適用
??メリット
販売員の入力工数を80%削減、再発注サイクル短縮
[食品・飲料 OEM/PB](賞味期限管理・分割納品が必須)
??課題
・倉庫在庫をロット別に分けたい
・取引先ごとに支払サイトが違う
??解決
マルチロケ在庫 × Net Terms で
拠点別在庫/Net30・Net45 与信を自動制御
??メリット
在庫引当の誤差ゼロ化、債権回収コストを可視化
[化粧品・日用品メーカー](輸出比率が高く法規制が複雑)
??課題
・EU VAT、成分規制で書類が煩雑
・サンプルは都度、小売りは定期便
??解決
VAT自動免税 + ミックスカート定期便
??メリット
海外バイヤーの離脱防止/LTV を定期+都度で最大化
[産業資材・部品サプライヤー](型番・図面付き SKU が数万点規模)
??課題
・FAX/EDI 依存で受注入力に半日
・最低注文数/金額制限を守れない
??解決
・CSV Bulk Checkout + Min/Max ルール で
・1,000 行注文を数秒取込/下限額を強制適用
??メリット
受注処理80%時間短縮、返品・差額請求ゼロへ
[家具・インテリア卸](大型商品で分割配送が頻発)
??課題
・複数倉庫からの出荷で送料表示が複雑
・見積→承認→請求が属人的
??解決
分割配送ロジック × Quote 承認フロー
??メリット
カゴ落ち原因だった送料計算の一括表示/見積 PDF 工数を削減

5. 導入判断と実装パターン
ここでは、実際にB2B機能を採用するかどうかを“腹落ち”させるための判断材料と、最短距離で立ち上げる実装パターンを整理します。
既存のERPやWMSとの連携、社内オペレーションの最適化、そしてB2Bチャネル拡張による売上インパクト?多角的な視点を持つことで、投資対効果がぶれないロードマップを描けます。
5-1. 現行システム/業務フローの棚卸し
[ポイントはデータの出入口]
・受注明細はCSV/APIどちらで取り込むか
・在庫マスタは単一SKUかロケーション別か
[棚卸しテンプレート例]
1.受注→ピッキング→請求→入金までの担当部門とツール
2.自動化できるタスク/属人的タスクを色分け
3.手戻りが発生しやすいブレークポイントを書き出す
5-2. B2Bチャネル拡張か置き換えか
| 目的 | 拡張(併用) | 置き換え(フル移行) |
| システム負荷 | 低 | 中?高 |
| 社内教育コスト | 低 | 高 |
| 効果測定のスピード | 遅い(段階的) | 早い(全量可視化) |
| 向いている企業 | 既存EDIが必須 | 新規D2C併営 |
Shopify Flowを併用すれば“拡張”でも注文ルーティングと在庫同期を自動化できるため、レガシーシステムを温存したままPoCが可能です。
5-3. 差別化機能とオペレーション最適化の優先度
1.差別化機能(顧客体験向上)
・得意先ごとのカスタム価格リスト
・返品/与信残高のリアルタイム表示
2.オペレーション最適化(内部効率化)
・CSV一括注文入力 → ピッキングリスト自動生成
・インボイス/請求書PDFの自動発行とメール配信
まずは体験価値がShopifyらしい攻め筋。差別化機能でリピート率を底上げし、受注量が増えたタイミングでバックエンド自動化に投資すると費用対効果が高まります。
5-4. 段階的導入ロードマップ(MVP→横展開)
| Phase | 期間 | ゴール | 主な施策 |
| MVP | 0-3ヶ月 | 主要顧客10社がポータル利用 | ・価格リスト/後払い設定・CSV注文受付 |
| 拡張 | 3-6ヶ月 | 顧客50社、月商1千万 | ・Flowでステータス連携・複数通貨Net Terms |
| 最適化 | 6-12ヶ月 | 全チャネル統合、月商3億 | ・ERP連携・分割配送とDDP対応 |
5-5. 外部委託と内製化の分岐点
| 判断軸 | 外部委託 | 内製(Shopify Plus + Apps) |
| カスタマイズ深度 | Deep(専用アドオン) | Middle(公開API) |
| 初期コスト | 高 | 低?中 |
| 変更スピード | 遅 | 早 |
| 運用人材 | 不要 | 必要(Shopify Admin操作スキル) |
| リスク | 外注ロックイン | 人員流出 |
[ガイドライン]
・「受注拡大フェーズ=内製」「基幹刷新フェーズ=SIer」 が鉄板
・SIer契約時はAPIライセンスの帰属とコード可搬性を必ず明記
・内製でもFlowテンプレートとGit管理で属人化を回避

6.まとめ
Shopify Editions Summer ’25は、企業アカウント階層・大量発注・与信後払い・多通貨請求・分割配送までをネイティブ機能として実装し、管理画面だけで本格的な卸売サイトを最短2週間で立ち上げられる環境を整えました。SKU が多く取引条件も複雑なアパレル卸や食品 OEM、産業資材サプライヤーなどは導入効果が特に大きく、まずは標準プランで試して、その後Plusでフル機能へ拡張する流れが現実的な選択肢となります。
ShopifyをはじめとするECサイトの新規構築から、テーマ改修・アプリ連携・B2B 機能の実装、日々の運用改善までshopifyエキスパート認定のraboならご支援可能です。
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