Shopifyの構築を制作会社に依頼して、納品されたストアを見たら「思っていたのと違う……」。こうしたすれ違いは、制作会社の技術力よりも、依頼時の情報の渡し方に原因があるケースがほとんどです。この記事では、制作会社が本当に必要としている情報を「5つのカテゴリ」に分けて整理していきます。依頼前に手元のメモにこの5つをまとめておくだけで、初回の打ち合わせから話が進み、見積もりや提案の精度も一段上がります。
- 目次
- 1. Shopify構築で「思っていたのと違う」が起きる本当の原因
- 2. 依頼前に整理しておくべき情報の全体像
- - 2-1. 5つのカテゴリと、それぞれが制作工程のどこに効くか
- - 2-2. 完璧に整理しなくていい。大事なのは「制作側が判断できる粒度」かどうか
- 3. 背景と目的
- - 3-1. 「新規立ち上げ」と「既存サイトの移行・改修」では、設計の出発点がまるで違う
- - 3-2. KPIが書けないときの対処法──「売上○○円」以外の目標の立て方
- 4. 商品・ターゲット
- - 4-1. 「自社の情報」を整理する(ペルソナ、SKU、単価、LTV)
- - 4-2. 「外の情報」を整理する(競合、参考サイト)
- 5. 機能・デザイン要件
- - 5-1. 「絶対に必要な機能」と「あったらいい機能」を分けるだけで見積もりの精度が変わる
- - 5-2. 外部連携の要件は「自社で今使っているツール一覧」を渡すだけでいい
- - 5-3. デザイン要件の正しい渡し方
- 6. 予算・スケジュール
- - 6-1. 初期構築費・月額保守費・広告費を分けて書くと、提案の質が上がる
- - 6-2. 納期は「希望日」と「絶対に動かせない期限」を分けて伝える
- 7. 運用・集客体制
- - 7-1. 公開後の更新を内製化するなら、管理画面の設計範囲を先に決めておく
- - 7-2. 集客チャネルが決まっていれば、構築時に仕込める導線がある
- 8. 依頼前の最終チェックポイント
- - 8-1. 制作会社に伝える前に確認したい6つのポイント
- - 8-2. 整った情報があれば、最初の打ち合わせから話が進む
1.Shopify構築で「思っていたのと違う」が起きる本当の原因

制作会社とのすれ違いの多くは、依頼者が「ちゃんと伝えた」と思っている情報が、制作側にとっては判断材料として不十分なまま進んでしまうことで起きています。
たとえば「シンプルでおしゃれなデザインにしてほしい」という要望。依頼者の頭の中には具体的なイメージがあっても、「シンプル」が余白の多いミニマルデザインなのか、色数を抑えたモノトーン基調なのか、情報量を減らしてファーストビューをすっきりさせたいのかは、言葉だけでは伝わりません。制作会社はどれかに解釈を絞って作業を進めるしかないため、納品時に「こういう意味じゃなかった」が発生しやすくなります。
デザインだけではありません。「決済はクレジットカードが使えればいい」という一言にしても、制作側は「コンビニ払いやキャリア決済はどうか」「Shopifyペイメント以外のゲートウェイは検討しているか」といった確認が必要になります。依頼者にとっては些細な省略でも、制作者にとっては設計判断に直結する情報の欠落です。
こうした情報の非対称性は、どちらかが悪いという話ではありません。依頼者はEC構築のプロではないので、何が「制作上の判断に必要な情報」かを知らないのが普通です。一方、制作会社も限られたヒアリング時間のなかですべてを聞き出せるわけではない。結果として、双方が「伝わっているはず」と思い込んだまま制作が進み、完成間近になって認識のズレが表面化するという構図が生まれます。
つまり、「思っていたのと違う」の原因は制作会社のスキル不足ではなく、依頼時に渡される情報の粒度が足りていないことにあるケースがほとんどです。
2.依頼前に整理しておくべき情報の全体像

個別のカテゴリに入る前に、まずは全体像を把握しておくと、整理の優先順位がつけやすくなります。
2-1. 5つのカテゴリと、それぞれが制作工程のどこに効くか
制作会社に伝える情報は、大きく5つのカテゴリに整理できます。
・背景と目的
・商品 / ターゲット
・機能 / デザイン要件
・予算 / スケジュール
・運用 / 集客体制
それぞれのカテゴリは、制作工程の異なるフェーズに影響を与えます。
「背景と目的」は、制作会社がプロジェクトの方向性を理解するための土台です。新規立ち上げなのか、BASEやMakeShopなど他プラットフォームからの移行なのか、既存Shopifyサイトの改修なのかによって、設計のアプローチ自体が変わるため、最初に固めておく必要があります。
「商品 / ターゲット」は、サイト構造やデザインの方向性を決める材料になります。取り扱う商品ジャンルやSKU数、ターゲット層の情報がないまま設計に入ると、あとからページ構成をやり直すことになりかねません。
「機能 / デザイン要件」は、見積もり金額に最も直結するカテゴリです。定期購入やPOS連携のような独自機能の有無、外部システムとの連携範囲によって、工数が大きく変動します。
「予算 / スケジュール」は、制作会社が提案の現実性を判断するための材料です。予算感がわからないまま提案を作ると、オーバースペックな提案か、逆に物足りない提案になりがちです。
「運用 / 集客体制」は構築後の話に見えますが、公開後に誰がどう運用するかによって管理画面の設計やタグの仕込みが変わるため、構築段階で把握しておく必要があります。
このように、5つのカテゴリはそれぞれ制作工程の異なるフェーズに効いています。必要な情報がそろっていれば、制作会社とも共通認識を持った状態で話を進めやすくなり、すれ違いも起こりにくくなります。
2-2. 完璧に整理しなくていい。大事なのは「制作側が判断できる粒度」かどうか
5つのカテゴリを目の前にすると、「全部しっかり整理しないといけないのか」と身構える方もいるかもしれません。結論から言えば、すべてを完璧にまとめる必要はありません。
大事なのは、制作会社がその情報をもとに「設計方針を決められるかどうか」です。たとえばKPIに「月商500万円」と伝えられれば理想的ですが、まだ数値目標が固まっていなければ「まずは月間100件の注文を安定させたい」程度でも制作側には十分なヒントになります。逆に、何も伝えないままだと「目標なし=こだわりなし」と解釈され、汎用的な設計に落ち着いてしまうことがあるので注意が必要です。
整理のコツは、「わからない」と「こだわりがない」を区別して伝えることです。わからない場合は「未定・要相談」と添えておけば、ヒアリング時に制作会社が深掘りしてくれます。一方、本当にこだわりがない項目は「お任せ」と伝えれば、制作会社はそこに工数をかけずに済みます。どちらも触れずにいると、この区別がつかず、確認のラリーが増えてしまうでしょう。
完璧を目指すのではなく、「この粒度があれば制作会社が質問を絞り込める」という状態を目指してください。次章からは、各カテゴリの具体的な整理のポイントを解説していきます。
3.背景と目的

5つのカテゴリのうち、最初に整理したいのが「背景と目的」です。ストアの目的が整理されていれば、制作会社は設計の方向性をぶらさずに検討しやすくなります。
3-1. 「新規立ち上げ」と「既存サイトの移行・改修」では、設計の出発点がまるで違う
新規立ち上げの場合、制作会社はゼロからサイト構造を設計します。商品データも顧客データもない状態なので、まず「どんな商品を、誰に、どう売るか」という骨格を固めるところから始まります。テーマ選定、ページ構成、カテゴリ設計のすべてが白紙からのスタートです。
一方、BASEやMakeShopなど他プラットフォームからの移行や、既存Shopifyサイトの改修では、すでに稼働しているストアのデータが存在します。この場合、制作会社が最初に確認するのは「今のサイトで何がうまくいっていて、何がうまくいっていないのか」という現状の評価です。商品データや顧客データの移行方法、既存のURL構造を維持するかどうか、現在使っているアプリの引き継ぎなど、新規にはない論点が数多く発生します。
制作会社に伝えるときは、単に「新規」「移行」の区分だけでなく、移行の場合は現在のプラットフォーム名と、移行の動機(運用コストを下げたい、機能が足りない、デザインを刷新したいなど)まで添えておくと、制作会社の初動が格段に早くなります。改修の場合は「今のサイトのどこに不満があるか」を箇条書きでも構わないので、一緒に伝えてみてください。
3-2. KPIが書けないときの対処法──「売上○○円」以外の目標の立て方
「目指すべき数値目標(KPI)はありますか?」と聞かれて、手が止まる方は少なくありません。ECをこれから始める段階で「月商○○円」と自信を持って書ける人のほうが少数派でしょう。
KPIが明確に書けない場合は、「何をもってこのプロジェクトを成功とみなすか」を別の角度から言語化してみてください。たとえば「まずは月間の注文件数を安定させたい」「リピート購入の比率を上げたい」「SNS経由の流入をストアに集約したい」といった表現でも、制作会社にとっては十分な設計指針になります。
数値を入れるなら、売上だけにこだわる必要はありません。「CVR(購入率)を現状の0.8%から1.5%に引き上げたい」「カート離脱率を減らしたい」「メルマガ登録を月200件に増やしたい」など、サイトの改善ポイントを数値化するアプローチもあります。こうした指標があると、制作会社はデザインやUI設計の判断材料として活用できます。
どうしても数値が出てこない場合は「KPI未定、まずは立ち上げを優先」と伝えておけば問題ありません。現状の整理状況が伝わることで、制作会社とも認識を合わせながら話を進めやすくなるでしょう。
4.商品・ターゲット

背景と目的が整理できたら、次はストアで扱う商品と、誰に売るのかの情報です。ここは、サイト構造やデザインの方向性を考えるうえで土台になる重要な部分です。
4-1. 「自社の情報」を整理する(ペルソナ、SKU、単価、LTV)
制作会社がサイト設計で最初に知りたいのは、「どんな人が、何を、いくらで、どのくらいの頻度で買うのか」です。これがわかると、トップページの構成からカテゴリの分け方、商品詳細ページの情報設計まで、一気に具体化できます。
ターゲット層(ペルソナ)
ターゲット層(ペルソナ)は、詳細なペルソナシートを作り込む必要はありません。「30代〜40代の女性、共働き、平日は時短で買い物を済ませたい層」程度の粒度があれば、制作会社はUIの優先順位を判断できます。ペルソナが複数ある場合は、メインとサブを分けて伝えておくと、デザインの軸がぶれにくくなります。
商品数(SKU数)
商品数(SKU数)は、サイト構造に直結する情報です。SKUが20点程度ならシンプルなコレクション構成で済みますが、500点を超えると検索・フィルタリング機能の設計が必要になり、工数と費用に影響します。現時点の商品数に加えて、半年〜1年後の想定数も伝えておくと、拡張性を考慮した設計をしてもらえるでしょう。
価格帯と平均購入単価
価格帯と平均購入単価は、決済手段の選定やカート周りのUI設計に関わります。単価が高い商品であれば、購入前の安心感を高めるためのコンテンツ(レビュー、FAQ、保証情報など)を厚くする設計が求められます。
LTV(顧客生涯価値)と平均購入回数
LTV(顧客生涯価値)と平均購入回数は、リピート施策の設計に直結します。まだ販売実績がない場合は「推定値」や「目標値」として伝えておけば、制作会社は施策の方向性を提案しやすくなります。
4-2. 「外の情報」を整理する(競合、参考サイト)
自社の情報と合わせて整理しておきたいのが、競合サイトや参考にしたいサイトの情報です。制作会社にとって、これは「依頼者がどの市場で、どのポジションを狙っているか」を理解するための重要な手がかりになります。
競合サイトを挙げる際のポイントは、「なぜそのサイトを競合と認識しているか」をひと言添えることです。「商品ジャンルが近い」「ターゲット層が重なる」「価格帯が似ている」など、理由があると制作会社は競合分析の精度を上げられます。単にURLだけを並べると、制作会社はそのサイトの何を見ればよいのか判断に迷うことがあります。
参考サイトについては、ここでは「ビジネス上のベンチマーク」として挙げるものに絞ってください。「このサイトのデザインが好き」という視覚的な参考は、デザイン要件の箇所であらためて扱います。ここで挙げるのは、「このサイトの品揃えの見せ方が参考になる」「このサイトの価格戦略に近いポジションを取りたい」といった、事業戦略上の参考です。
競合・参考サイトは3〜5サイト程度あれば十分です。多すぎると制作会社が優先順位をつけにくくなるため、「特に重視したいサイト」に印をつけておくとスムーズに進みます。
5.機能・デザイン要件

ここからは、見積もり金額に大きく関わる、機能とデザインの要件を整理していきます。ここを具体的に伝えられると、見積もりの精度が上がり、完成イメージも共有しやすくなります。
5-1. 「絶対に必要な機能」と「あったらいい機能」を分けるだけで見積もりの精度が変わる
機能要件を制作会社に伝えるとき、もっとも効果的なのは「Must(絶対に必要)」と「Want(あったらいい)」を分けて伝えることです。これだけで、見積もりの内訳が大きく変わります。
すべての機能を「必須」として渡すと、制作会社はそのすべてを初期構築に含めた見積もりを出します。結果として金額が膨らみ、「高すぎて依頼できない」となるケースは珍しくありません。MustとWantを分けておけば、制作会社は「Mustだけで構築した場合」と「Wantも含めた場合」の2パターンで提案を出せるため、予算との折り合いがつけやすくなります。
分類に迷ったときは、「この機能がないとストアを公開できないか?」を基準にしてみてください。定期購入(サブスクリプション)機能は、サブスクモデルのビジネスならMust。ポイントプログラムは、立ち上げ初期には不要で、顧客基盤ができてから導入するほうが効果的なケースもあるため、Wantに分類できるかもしれません。
Shopifyはアプリによる機能拡張が得意なプラットフォームなので、「あとから追加できる機能」と「構築時に組み込まないと後から変更しにくい機能」の区別を制作会社に相談するのも有効です。この区別がつくと、初期費用を抑えながら段階的に機能を拡張するロードマップが描けます。
5-2. 外部連携の要件は「自社で今使っているツール一覧」を渡すだけでいい
外部システムとの連携は、要件定義のなかでもハードルが高く感じる部分でしょう。「APIの仕様がわからないと伝えられないのでは」と思うかもしれませんが、その心配は不要です。
制作会社が知りたいのは、まず「今どんなツールを使っているか」です。受注管理にネクストエンジンを使っている、在庫管理は外部の倉庫システムと連携している、CRMはHubSpotを使っている──こうした情報をツール名とサービス名で列挙するだけで、制作会社は連携の技術的な実現可能性と工数を判断できます。
ツール一覧を伝える際に添えておくと助かるのが、「そのツールとShopifyの間でどんなデータをやり取りしたいか」です。たとえば「ネクストエンジンで受注データを一元管理したい」「倉庫システムに在庫数を自動連携したい」程度の粒度で十分です。技術的な接続方法(API、CSV、Webhook等)は制作会社が調査・提案する領域なので、依頼者側が指定する必要はありません。
現時点で外部ツールを使っていない場合は「連携予定なし」と明記しておいてください。将来的に導入を検討しているツールがあれば、「将来的にネクストエンジンを導入予定」のように伝えておくと、拡張を見越した設計をしてもらえます。
5-3. デザイン要件の正しい渡し方
デザインの要望を制作会社に伝えるとき、最もすれ違いが起きやすいのは「好き」だけを伝えて「何が好きか」を伝えないケースです。
参考サイトを提示する場合、URLだけでなく「そのサイトのどこが好きか」を具体的に言語化してください。「全体の雰囲気が好き」だけでは、制作会社はフォント、配色、レイアウト、写真のトーン、余白の取り方のどれを再現すべきか判断できません。「商品写真が大きく見えるレイアウトが好き」「フォントの細さと余白の多さが好き」といった要素単位の言語化があると、デザインの方向性がぐっと絞り込めます。
もう一つ大事なのが、デザインにどこまで費用をかけるかの方針です。Shopifyには既存テーマが豊富にあり、テーマのカスタマイズ範囲内で仕上げれば費用を抑えられます。一方、完全にオリジナルのデザインを求める場合は、デザイン工程だけで数十万円〜の費用が上乗せされるのが一般的です。「テーマカスタマイズの範囲内で費用を抑えたい」のか「費用をかけてでもオリジナルデザインにしたい」のか、どちらの方針かを明確に伝えておくと、見積もりの前提が揃います。
参考サイトは3サイト程度に絞り、それぞれ「好きなポイント」と「真似したくないポイント」の両方を伝えておくと、制作会社はデザイン提案の精度を大幅に上げられます。
6.予算・スケジュール

機能やデザインの要件が固まってきたら、次に整理しておきたいのが予算とスケジュールです。より自社に合った提案を受けるためにも、この2点はしっかりとおさえておきたいポイントです。
6-1. 初期構築費・月額保守費・広告費を分けて書くと、提案の質が上がる
予算を「全部で200万円くらい」とまとめて伝えるのと、「初期構築に100〜150万円、保守運用に月5〜10万円、広告に月50万円」と分けて伝えるのでは、制作会社から返ってくる提案の質がまったく異なります。
分けて伝える理由は、費用の性質がそれぞれ違うからです。初期構築費はデザインや機能開発に充てる一時費用、保守費は公開後のエラー対応や運用サポートなどに充てる月額費用、広告費はGoogle広告やSNS広告に充てるマーケティング費用です。これらを一括りにすると、制作会社は「構築にいくらかけてよいのか」が見えず、提案が曖昧になります。
金額が確定していなくても、レンジ(幅)で伝えておけば十分です。「初期費用:100〜150万円」「保守費用:5〜10万円/月」のように伝えておけば、制作会社は上限と下限のそれぞれで提案を調整できます。マーケティングコンサルティングや広告運用の費用を含めるかどうかも、分けて伝えておくと制作会社が提案範囲を正しく理解できるでしょう。
予算感がまったくわからない場合は、「相場観がないので提案ベースで見積もってほしい」と伝えても問題ありません。ただしその場合は、機能要件のMust/Want分類をしっかり伝えておかないと、制作会社は見積もりの根拠を作れない点に注意してください。
6-2. 納期は「希望日」と「絶対に動かせない期限」を分けて伝える
「3ヶ月後にオープンしたい」という納期の伝え方は、制作会社が判断するための情報としては、やや使いにくい場合があります。その3ヶ月が「できればそのくらいで」なのか「その日に合わせたキャンペーンがあるから絶対に動かせない」のかで、制作会社のプロジェクト設計が変わるからです。
納期を伝えるときは、「希望公開日」と「デッドライン(絶対に動かせない期限)」を分けてください。希望日は多少前後しても許容できる日付、デッドラインはそれを過ぎるとビジネス上の損失が出る日付です。たとえば「希望は9月1日。ただし、10月のセールに間に合わせるために9月20日がデッドライン」のように伝えると、制作会社はバッファを計算したうえでスケジュールを組めます。
デッドラインがある場合、制作会社はそこから逆算して「いつまでにデザイン確定」「いつまでにコーディング完了」といったマイルストーンを設定します。逆にデッドラインが特にない場合は、品質を優先したスケジュールを提案してもらえるため、無理のない進行になりやすいでしょう。
あわせて、制作開始前に依頼者側で準備が必要な素材(商品写真、ロゴデータ、テキスト原稿など)がいつ揃うかも伝えておくと、制作会社はリアルなスケジュールを組みやすくなります。
7.運用・集客体制

構築が完了した「その先」をどう運用するかは、実は構築段階で決めておくべきことが少なくありません。公開後に「この機能が足りなかった」と気づいても、後付けでは対応コストが跳ね上がるものです。
7-1. 公開後の更新を内製化するなら、管理画面の設計範囲を先に決めておく
公開後に「商品登録やバナー更新は自社でやりたかったのに、管理画面が複雑で触れない」──こうした声は少なくありません。Shopifyの管理画面は比較的わかりやすい設計ですが、テーマのカスタマイズ領域は制作会社の設計次第で操作性が大きく変わります。バナーの差し替えひとつとっても、コード編集が必要な作り方と、管理画面から画像をアップロードするだけで済む作り方があり、制作時にどちらで設計するかは「公開後に誰が更新するか」の情報がないと判断できません。この情報が抜けたまま制作が進むと、更新のたびに制作会社へ依頼が必要になり、月々の保守費用がかさむ原因になります。
内製化の範囲は、「すべて自社」「定常的な更新は自社、大きな変更は制作会社に依頼」「すべて制作会社に委託」のどれかを明記しておくとよいでしょう。特に「定常的な更新は自社で行いたい」というパターンが多いですが、その場合は「どの作業を自社で行うのか」まで具体的に伝えておくと、制作会社は管理画面の設計範囲を正しく見積もれます。
運用マニュアルの作成を依頼するかどうかも、このタイミングで伝えておくとスムーズです。マニュアル作成を見積もりに含めるかどうかで金額が変わるため、後出しにならないよう事前に整理しておいてください。
7-2. 集客チャネルが決まっていれば、構築時に仕込める導線がある
SNS、Google広告、SEO、インフルエンサーマーケティング──集客チャネルの候補がある程度見えていれば、構築時にそのチャネルに最適化した導線を仕込めます。
たとえばInstagramからの流入がメインになると想定しているなら、トップページにInstagramフィードの埋め込み枠を設けたり、商品詳細ページにSNSシェアボタンを目立つ位置に配置したりする設計が考えられます。Google広告を主軸にする場合は、広告のランディングページとして機能する専用ページのテンプレートを構築時に用意しておくと、広告運用開始後の動きがスムーズです。
SEOを重視するなら、構築段階でのメタタグ設計、パンくずリストの実装、ブログ機能の設計が重要になります。こうした施策は公開後に追加するより、構築時に組み込んでおくほうが工数を抑えられます。
集客チャネルが未定の場合は、「未定だが、SNSと広告は検討している」程度の情報でも伝えておいてください。制作会社はその情報をもとに、最低限のタグ設定(Googleタグマネージャー、Metaピクセルなど)を初期構築に含めるかどうかを判断できます。
8.依頼前の最終チェックポイント

ここまで5つのカテゴリを整理してきましたが、制作会社に伝える前に、最後にかけておきたい確認工程があります。整理した情報が実際に「制作会社が動ける形」になっているかのセルフチェックです。
8-1. 制作会社に伝える前に確認したい6つのポイント
5つのカテゴリを整理し終えたら、制作会社に連絡する前に、以下のポイントを確認してみてください。どれも「伝えたつもりで抜けている」が起きやすい部分です。
①「新規 / 移行 / 改修」の区分と、その背景が整理されているか。移行の場合は現プラットフォーム名が入っているか。
②機能要件がMust(必須)とWant(あれば嬉しい)に分類されているか。
③予算が「初期構築」「保守」「広告」のように分けて整理されているか。まとめてしまっている場合は、分けられないか検討する。
④デザインの参考サイトを挙げている場合、「何が好きか」の理由が整理されているか。URLだけになっていないか。
⑤情報として出せない項目が「未定・要相談」なのか「こだわりなし・お任せ」なのか、区別がつくように整理されているか。
⑥公開後の運用体制(内製 / 外注 / 一部内製)が明確になっているか。
完璧な状態でなくても大丈夫です。まずはこのチェックを通して、「今わかっていること」と「まだ決まっていないこと」の境界線をはっきりさせておきましょう。
8-2. 整った情報があれば、最初の打ち合わせから話が進む
ここまで整理してきた5つのカテゴリと最終チェックは、制作会社への「提出資料」を作るためのものではありません。依頼者自身が、自社の要望を「制作会社が動ける粒度」まで言語化するための地図です。
この地図を手元に持って臨むと、最初の打ち合わせの景色が変わります。制作会社からのヒアリングは確認のラリーではなく、論点を深掘りする対話になり、見積もりは前提が揃った状態で返ってきます。結果として、「思っていたのと違う」が起きる余地そのものが減っていく──これが、依頼前の30分〜1時間の整理が生む本当の効果です。
完璧を目指さなくて大丈夫。整理できた範囲で、自信を持って制作会社に連絡してみてください。事前準備を進めて、実りあるスタートにつなげていきましょう。











