この記事では、アトリビューション分析の基本を、初めての方にも分かるように整理します。評価モデルにどんな種類があり、何が違い、自社の運用でどう選ぶのかまでを扱います。
広告の成果をレポートにまとめると、購入の直前にクリックされた広告ばかりが上位に並ぶことがあります。この、最後の広告だけを見て成果を測る方法を、ラストクリックと呼びます。
Raboに届く相談でも、この最後の広告だけが評価される状態への違和感はよく聞かれます。実際には購入までに複数の広告を見ているのに、成果が最後の1つに寄ってしまうためです。すると、本当は購入につながった広告を、役立っていないと思い込んで見落としてしまいます。
その偏りを補正する考え方が、アトリビューション分析です。1回のコンバージョン(購入や申し込みなどの成果)を、途中で見た複数の広告に分け合って評価します。最後の広告だけでなく、きっかけを作った広告にも貢献度を割り当てて全体を見ます。
この分け合い方には、いくつかの決め方があります。決め方の一つひとつが、評価モデルと呼ばれるものです。どれを選ぶかで、同じ広告でも評価される数字は変わります。
いま自社がどの決め方で成果を測っているかを知ると、レポートの見方も変わります。
- 1.最後の広告だけで評価すると途中の貢献を読み違える
- 1-1. ラストクリック評価の仕組みと普及した理由
- 1-2. ラストクリックが見落とす途中の接点
- 2.ラストクリック以外の5つの評価モデルと貢献度の割り当て方
- 2-1. ファーストクリック|最初にクリックされた広告に貢献度をすべて割り当てる
- 2-2. 線形|すべての接点へ均等に配分する
- 2-3. 時間減衰|購入に近いほど大きく評価する
- 2-4. 位置ベース|最初と最後を重視する
- 2-5. データドリブン|実データから貢献度を推定する
- 3.実務での選択はラストクリックかデータドリブンに絞られる
- 3-1. ラストクリックが向くのは短期で単純な経路のとき
- 3-2. データドリブンが向くのは多接点でデータが十分なとき
- 4.評価モデルの変更は運用と計測の見直しを迫る
- 4-1. 予算配分と入札の見直しが必要になる
- 4-2. 過去データとの比較が途切れる
- 4-3. Google広告に取り込まれる数字も変わる
- 5.よくある質問(FAQ)
- 6.まとめ
1.最後の広告だけで評価すると途中の貢献を読み違える

1-1. ラストクリック評価の仕組みと普及した理由
ラストクリックは、コンバージョン直前にクリックされた1つの広告へ、貢献度を100%割り当てる方式です。購入までの途中で見た広告は、数字の上では評価されません。
この方式が広く使われてきたのは、集計と運用が分かりやすいからです。見るべき広告が1つに定まるため、レポートは単純になります。媒体(広告の出し先)をまたいだ数字の突き合わせもしやすい仕組みです。
広告を1〜2回見ただけで買うような商材では、最後の広告が実態とほぼ一致します。たとえば、使い慣れた日用品の買い足しや、単価の低い定番品。こうした購入までの流れが短い場合は、ラストクリックでも実態とのズレは小さく収まります。
Google広告やGA4(Googleの無料アクセス解析ツール)でも、ラストクリックは長く初期設定のモデルでした。いまの初期設定は、データドリブンに変わっています。こちらは、複数の広告へデータをもとに貢献度を割り振るモデルです。
それでも、経路が短く最後の広告が決め手になる商材では、いまもラストクリックが選ばれます。
1-2. ラストクリックが見落とす途中の接点
あるお客さまが、SNSの広告で商品を知り、後日メールマガジンのリンクで思い出し、最後に商品名で検索してクリックして購入したとします。このように、広告やメールなど触れた一つひとつの場面を、接点と呼びます。
ラストクリックでは、この購入の貢献度はすべて最後の検索へ渡ります。最初のきっかけを作ったSNS広告やメールの貢献度は、0として扱われます。認知や比較の段階を後押しした広告が、最後の接点にすべて吸い上げられるためです。
この見落としは、最初のきっかけを作る広告を止める判断につながります。数字が0の広告は、不要に見えるからです。SNSやメールでの案内を止めると、そもそも商品を知る人が減り、最後に検索して買う人も減ります。結果として、広告全体の成果が下がるケースがあります。
広告を1つしか見ていない場合なら、この問題は起きません。いくつもの広告や媒体にまたがって買うほど、ズレは大きくなります。
ラストクリックの数字は、最後の後押しの強さは映しますが、そこへ至る道のりは映しません。いくつもの広告を通して買ってもらっている会社ほど、この隠れた貢献を無視しにくくなります。
2.ラストクリック以外の5つの評価モデルと貢献度の割り当て方

貢献度の配り方には、大きく2つのタイプがあります。あらかじめ決めた規則で配るルールベースと、実際のデータから割り出すデータドリブンです。ここで扱う5つのうち、ファーストクリック・線形・時間減衰・位置ベースの4つがルールベース、残る1つがデータドリブンにあたります。
Google広告とGA4で自分で選べるのは、データドリブンとラストクリックの2つだけです。ルールベースの4モデルは2023年にサポートが終了し、いまは設定画面から選べません。
なお、時間減衰と位置ベースは、Google広告ではそれぞれ「減衰」「接点ベース」と表記されます。
考え方を比べやすいよう、1つの具体例で見比べます。新しいワイヤレスイヤホンを探している人が、次の順で広告に触れて購入したとします。
(1) InstagramでA社イヤホンの動画広告を見て、商品を知る
(2) 後日、ニュースサイトのディスプレイ広告で思い出す
(3) 比較サイトに出ていた広告から、詳しく調べる
(4)「A社 イヤホン」と検索してクリックし、購入する
この同じ流れに各モデルを当てはめると、配り方の違いがはっきりします。
2-1. ファーストクリック|最初にクリックされた広告に貢献度をすべて割り当てる
ファーストクリックは、最初にクリックされた広告へ貢献度を100%割り当てる方式です。あとに続く広告は、何回見ても評価されません。
先ほどの流れなら、最初に見た(1)の動画広告が100%を受け取り、(2)(3)(4)は0です。
新規のお客さまと最初に出会わせた広告が、はっきり見えます。どの広告が入口になっているかが分かるため、新規開拓に力を入れたい局面と相性が良い方式です。
反面、比較や購入を後押しした広告は評価されません。数字だけで後半の広告を削ると、入口はあっても購入まで運べなくなる恐れがあります。
2-2. 線形|すべての接点へ均等に配分する
先ほどの流れに当てはめると、(1)〜(4)が貢献度を25%ずつ。動画も検索も、同じ評価です。線形は、見たすべての広告へ均等に配る方式です。
どの広告も切り捨てないため、経路の全体像をつかむ入口として使えます。弱点は、実際の貢献の差が消えることです。後押しの強い広告も弱い広告も同じ25%になり、力の入れどころが見えません。
2-3. 時間減衰|購入に近いほど大きく評価する
この流れなら、購入直前の(4)がいちばん大きく、(1)の動画広告へさかのぼるほど小さくなります。時間減衰は、購入に近い広告ほど厚く配る方式です。
検討に時間がかかる商材で、購入を後押しした広告を見極めたいときに向きます。高額な商品や、比較期間の長いサービスが当てはまります。
取りこぼしやすいのは、最初のきっかけです。古い広告ほど軽く出るため、認知の施策を過小評価しがちです。
2-4. 位置ベース|最初と最後を重視する
位置ベースは、入口と決め手の2か所に貢献度を寄せ、間の広告は軽く扱います。
認知を広げる広告と、購入を後押しする広告の両方を、同時に評価できます。入口と決め手のバランスを見たいときに適しています。
先ほどの流れなら、入口の(1)と決め手の(4)の貢献度が大きく、間の(2)(3)は小さくなります。
一方で、比較を支えた中間の広告は軽く出ます。育成の段階での貢献は、見えにくくなります。
2-5. データドリブン|実データから貢献度を推定する
データドリブンだけは、あらかじめ決めた規則を持ちません。自分のアカウントにたまった実際のデータから、どの広告がどれだけ貢献したかを推定し、1件の成果をその割合で各広告に割り振ります。割り振り方は広告主や成果ごとに変わり、計算式も公開されていません。
購入に至った流れと、至らなかった流れを比べ、貢献の大きい広告により多くを配ります。固定の規則より、実態に近い配分へ近づけられるのが強みです。
同じ流れでも、(1)〜(4)の配分は実績しだいで変わります。ほかの4つと違い、固定の比率はありません。
ただし、配分の理由は数字で追いにくく、精度を出すにはある程度のデータ量が要ります。
検索・ショッピング・YouTube・ディスプレイなどの広告経由で、ウェブサイトや来店のコンバージョンを計測している場合に使えます。利用に必要な最低ラインはありません。Google広告の目安は、30日間で200件以上の成果と、2,000回以上の広告への反応(クリックや視聴)です。
3.実務での選択はラストクリックかデータドリブンに絞られる

ファーストクリックや時間減衰などの考え方は、結果を読み解く物差しとして役に立ちます。実際にどちらの設定で運用するかは、自社の購入経路とデータ量で決まります。経路が短いか長いか、データがたまっているかどうかが、判断の分かれ目です。
3-1. ラストクリックが向くのは短期で単純な経路のとき
広告を見て、その場で買う。こうした短い経路なら、ラストクリックで十分です。
商品名での検索が集客の中心になっている、広告の出し先が1つに絞られている、といった運用が当てはまります。途中の接点が少なく、データドリブンで配り分ける余地がほとんどないためです。
広告を始めたばかりで、データドリブンを動かすだけのデータがまだたまっていないアカウントでも、まずはラストクリックが無難な選択です。
3-2. データドリブンが向くのは多接点でデータが十分なとき
複数の広告や媒体をまたいで購入に至る経路でこそ、データドリブンは力を発揮します。動画・ディスプレイ・SNS・検索が混ざるほど、その差が出ます。
こうした経路では、途中の貢献まで反映する配分が実態に近づきます。入札を自動で調整する仕組みと組み合わせると、成果を伸ばしやすくなります。
選ぶ前に、学習に足るデータ量がたまっているかを確かめる必要があります。データが少ないと推定が不安定になり、ラストクリックとほぼ同じ結果になることもあります。
4.評価モデルの変更は運用と計測の見直しを迫る

評価モデルを変えると、同じ成果でもレポートの数字が変わります。ただ、変わるのは数字の見え方だけではありません。これまでの予算配分や過去との比較、そしてGoogle広告へ取り込まれる数字にまで影響が及びます。切り替える前に、影響の範囲をつかんでおく必要があります。
4-1. 予算配分と入札の見直しが必要になる
モデルを変えると各広告の評価が変わるため、これまでの予算配分と入札(広告1回にいくらまで払うかの設定)の前提が崩れます。
たとえば認知を広げる広告の評価が上がれば、そこへ予算を厚くする判断に変わります。入札を自動で調整している場合は、新しい評価をもとに学習し直す期間が要ります。
1件あたりの獲得コストや費用対効果の目標を、古い基準のまま据え置くと、自動での入札調整がうまく働きません。新しいモデルでは同じ成果でも評価される額が変わるためです。
目標に届いていないと見なして配信を絞ったり、逆に無理に広げたりします。切り替えた直後は数値が大きく動くため、すぐに目標値を変えず、数字が落ち着いてから新しい基準へ調整します。
4-2. 過去データとの比較が途切れる
同じ購入でも、モデルが変われば評価される数字が変わります。そのため、切り替えの前後を単純には比べられなくなります。
切り替えた日を境に、時系列のレポートはつながりが切れます。たとえば、コンバージョン数や獲得単価を前年の同じ月と比べても、モデルが違えば同じ物差しで測ったことにはなりません。増減が施策の成果なのか、モデル変更の影響なのか、切り分けられなくなります。
切り替えた日を記録し、レポートに注記を残しておくと、あとで混乱を防げます。新旧の差を確かめたいときは、GA4のモデル比較レポートで見比べる方法もあります。
4-3. Google広告に取り込まれる数字も変わる
GA4で選んだモデルは、Google広告に取り込まれる成果の数え方にも影響します。GA4だけの問題では終わりません。
データドリブンで割り振った成果は、GA4からGoogle広告へ渡り、入札の学習に使われます。モデルを変えると、取り込まれたあとの数字も、入札の動きも変わります。ただし、こうした取り込みが働くのは、Google広告側のコンバージョン設定もデータドリブンのときです。
切り替えた直後は取り込み値がぶれます。Google広告側の数字だけを見て、急に判断するのは避けます。
5.よくある質問(FAQ)

GA4のモデル比較レポートで比較できるモデルは?
並べて比べられるのは、データドリブンとラストクリックの2つです。ラストクリックには、対象の違う2種類があります。
「有料・オーガニックのラストクリック」は、広告に加えて自然検索やメールなども含め、最後の接点に貢献度を全部渡します。「Google広告優先のラストクリック」は、最後のGoogle広告に貢献度を全部渡します。GA4の数字をGoogle広告のレポートに合わせたいときに使います。
操作は、GA4の「広告>アトリビューション>モデル比較」から行います。両方を並べて数字がほとんど変わらなければ、データが少なく、データドリブンがラストクリックに近い動きをしているサインです。
ずっと前に見た広告や、履歴を消したあとの接点も計測できる?
どちらも、実測ではつながりません。その接点は、貢献度の計算から外れます。
計測には期間の上限があり、これを計測期間と呼びます。Google広告はクリックで最長90日・初期値30日、GA4も最長90日です。1年前など期間を大きく超えた接点は、そもそも記録されません。
履歴やクッキーを消すと、前後の訪問が別人として扱われ、経路が途切れます。GA4では流入元が特定できず、「どこから来たか不明」を意味する「(direct)/未割り当て」として集計されやすくなります。
足りない分は、Googleが実データや過去の傾向をもとに、コンバージョンを推定して補います。この推定はモデリングと呼ばれ、実測ではありません。
Meta広告やAmazonのアトリビューションもGoogleと同じ選択肢?
同じ選択肢ではありません。媒体ごとに、成果の数え方の仕組みが違うためです。
Metaは、モデルを選ぶというより、成果を数える期間(計測期間)で調整する方式です。ウェブや店頭のコンバージョンでは、クリックは1日または7日、ビューは1日、エンゲージは1日から選べます。
Amazonは、独自の仕組みで成果を計測します。Amazon外の広告の効果を測るのがAmazon Attributionです。より細かく分析できるAmazon Marketing Cloud(AMC)もあります。標準のレポートは、14日間の計測期間で数えます。
同じ購入でも、媒体ごとに数え方が違います。Googleで選んだアトリビューションのモデルの考え方は、そのままMetaやAmazonには持ち込めません。そのため、各媒体の成果を単純に足すと、同じ購入を重複して数え、実態より多く見えます。
6.まとめ

評価モデルに、唯一の正解はありません。ファーストクリック・線形・時間減衰・位置ベースの4つは、貢献度の配り方を考えるときの物差しになります。
実際に設定で選ぶのは、ラストクリックかデータドリブンの2つです。最後だけを見るラストクリックと、実データから配るデータドリブンで、向く場面が違います。
決め手は、自社の購入経路の長さと、たまっているデータ量です。広告を1つか2つ見てすぐ買われるなら、経路は短い方です。ディスプレイや動画、検索などを横断して買われるなら、長い方といえます。毎月コンバージョンが安定して集まっているかも、あわせて確かめます。
出発点は、いま自社がどのモデルで成果を測っているかを確かめることです。経路が短いならラストクリック、経路が長くデータも十分ならデータドリブンが向きます。自社の状況に当てはめて選べば、判断に使える形になります。
参考文献
サポートが終了したアトリビューション モデルについて(Google広告ヘルプ)
アトリビューション設定を選択する/キーイベントのルックバック ウィンドウ(GA4ヘルプ)
データドリブン アトリビューションについて(Google広告ヘルプ)
同意モードにおけるモデリングについて(Google広告ヘルプ)












